2022年、どこまで進む翻訳技術。グーグル翻訳超え「DeepL」の進化

DeepL翻訳アプリのアイコン。他アプリと共有機能で連携できる。


グーグル、アマゾンら超強豪おさえ……


DeepLのリリース当初、言語業界からの同ツールの品質に関する反応は慎重なものだったが、今やその性能に疑義を唱える者はいない。

同社が行ったテストで、プロの翻訳者を対象としたDeepL、グーグル、マイクロソフト、アマゾン各社を比較したブラインドテストでは、翻訳者たちは他サービスよりもDeepL翻訳を評価する傾向が非常に強いという結果が出た。

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さまざまな分野のテキストから119段落を抽出し、異なる翻訳システムを使って翻訳。同社外のプロの翻訳者に、翻訳システムの名前を伏せた状態で訳文を示し、評価してもらった。グラフは、各翻訳システムの訳文が、どのくらいの頻度で他より高い評価を得られたかを示している(2020年1月実施。DeepL HPより)。

DeepLのプレス資料によると、このスーパーコンピューターは世界で23番目の大きさで、100万語を1秒以内に翻訳することができるという。

DeepLは提供開始後まもなく市場に浸透し、同ウェブサイトへのアクセスは急増した。これまでに全世界で少なくとも10億人以上が同サービスを利用しているという。

独スタートアップ、急成長の“核”は


革新的なDeepLの翻訳技術を支える“核”の部分については、多くの人が関心を寄せている。

だが同社は、今のところ同社の自然言語処理の屋台骨となる核心技術、アルゴリズムなどについては口を閉ざしている。強力な競合他社を持つ同社にとって、その種を内密にしておくことは競争力を維持する上では賢明な判断だといえるだろう。

ちなみにグーグルは現在、機械翻訳を専門とする91人以上の研究者、400人以上のNLP専門家、1000人以上の機械知能の専門家を抱えている。このことを考えれば、DeepL研究チームの実力がいかに驚異的なものであるかが分かる。グーグルはまた、保有する大規模なコンピュータリソースを活用し訓練した、何パターンもの新しいモデルを迅速に実験にまわし、翻訳品質を向上させ続けることもできるのだ。

DeepLのような高精度な翻訳サービスが、ZoomやSlackなどありとあらゆるツールと繋がるようになれば、これまでとは比べ物にならないほど言語の壁は低くなる。さらに、タイムラグがほぼゼロに近いかたちで翻訳できるようになれば、母語が異なる相手ともリアルな環境と相違ないかたちでコミュニケーションが取れるようになるだろう。

日本の市場が縮小している昨今、企業が海外展開を図る上でも、DeepLのようなコンテンツをいち早く効果的に活用することがいち課題となっていくのか── 。

「機械翻訳を使う=手抜き」という価値観は、もはや時代錯誤なのかもしれない。

文=長谷川 寧々 企画=石井 節子

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