世界が評価。若手日本人デザイナーによる「ユニバーサルソファ」誕生秘話


──こうして作られた「Band Sofa」が世界的なデザイン賞を受賞しましたが、いかがですか?

Band Sofa は世界3大デザインアワードと言われる、「Red Dot Design Award」「iF Design Award」を受賞

八田:選ばれたことは単純に嬉しいです。モノとしてデザインがいいと、世界的に権威ある賞から評価されたのは嬉しいのですが、それよりも実際にみなさんが使ってくれている、ということ自体が嬉しいです。我々の活動としては初めてカタチになったものなので、その喜びが大きいですね。

脇坂:デザイン賞を色々と獲得していく中で、協力してくれた方たちが喜んでくれて、やってよかったなという達成感とデザインにこだわってよかったなという気持ちがあります。

あともうひとつ、様々な細かい工夫を世界に発信できたのもよかったです。パラアリーナの選手やスタッフの方々が出してくれた意見をデザインに落とし込み、世の中に伝えることができたのは、デザイナーとしてもやりがいがある。

Band Sofa

これからのUDに求められることとは?


──ユニバーサルデザイン(以下、UD)は、すでに1980年代にアメリカで提唱され始めていましたが、現在は多様性が重視されるようになり、以前よりも世の中に浸透していると思います。昨今、そしてこれからのUDについて、お二人はどう考えていますか?

八田:これからは、UDは特別なものではなく、どの製品にも考えられるべきことかなと思います。元々のUDは健常者ベースの目線で、いろいろな人が使えるようなデザインという観点が強いのですが、その派生的な考え方であるインクルーシブデザインというものがあります。特定のユーザーに、デザインを開発するプロセスに入ってもらうんです。その人たちの目線でUDでは考えつかなかったようなことを見出していく。UDではあるけれど、健常者目線からではなく特定のユーザー目線からのアプローチで手掛けていく、というのが現在の潮流としてある。

「Band Sofa」はそれに近い形だったと思います。今までのUDのように画一的なデザインでカバーできる範囲は、やはりそんなに広くないと思うので、障がいのある方も健常者の方も、使い勝手や使い心地が良くなる要素を見出していくことが、これからのUDにとって必要になってくることだと思います。

脇坂:例えば公衆トイレの手すりとかは変な位置に付いていることも多くて、実は車いすの人の高さに合っていなかったりします。そもそもの役割を果たせていないだけでなく、デザインも微妙だったりするので、逆に当事者の方がつけたくない、とおっしゃることもある。わざわざ「私は障がい者です」と言っているようなものだと。

だからこそ、障がいのある方も健常者の方も両方が使いやすく、なおかつそれがさりげなく取り入れられていてカッコいいデザインだったら嬉しいですよね。そういう意味で「Band Sofa」は、これからのUDとして、綺麗に一つにまとまったものになったかなと思っています。
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文=中沢 純(パラサポWEB) 写真=佐々木 健

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