世界3大デザインアワードと言われている「Red Dot Design Award」「iF Design Award」をダブルで受賞し、国内でも「JID Design Award」受賞、「JIDA Design Museum Selection」選出という快挙を成し遂げた。
新国立競技場の整備事業建設現場の職長会が中心となった作業員の飲料空き缶・ペットボトル等の分別徹底等の「リサイクル活動」による寄付金を活用して制作され、現在、多くのパラアスリートが集うパラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」のエントランスに設置され、存在感を放っている。
誰もが使いやすく、モチベーションが向上する──。そのスタイリッシュなルックスに秘められたデザインのアイデア、そして、これからのデザインのあり方とは?
「Band Sofa」を制作した日本人デザインユニット「wah」の脇坂 政高氏と八田 興氏に聞いた。
デザインユニット「wah」の脇坂 政高氏(左)と八田 興氏(右)
デザインの方向性を決定付けた、パラアスリートとの対話
──お二人が手掛けた「Band Sofa」は、ドイツの有名なデザインアワード「iF Design Award」「Red Dot Design Award」に入賞するなど、世界的に評価されることとなりました。このソファは元々日本財団パラアリーナに設置されることが決まっていたということで、パラアスリートの方が使用することを想定されていたと思いますが、どのような流れでデザインが決まっていったのでしょうか?
八田:ソファを作るというお話をいただいたときに、まずはパラアリーナを見学させていただきました。そのときちょうど車いすバスケットボールの選手や車いすラグビーの選手が入れ替わるタイミングで、いろいろな競技の方が集まっていました。
ただ、選手たちは接点があまりない様子で、多種多様なバックグラウンドを持った競技者同士が、もっとコミュニケーションを取れる「場」が必要だと感じました。パラリンピックで良い結果を残そうと、同じ目標を持っている選手たちが同じ場を共有して交流し、絆を作る、そういった「宿り木」みたいな存在になればいいなと。
「Band Sofa」という名前には、メダルを首にかける帯の「バンド」という意味のほかに、絆を繋ぐといった意味での「バンド」という裏テーマもあります。
脇坂:具体的な指示のある通常のデザイン依頼と違って、今回はソファを作ってほしいという漠然とした依頼だったので、まずはキーワード探しを最初に行いました。色々とヒアリングを続けていく中で、やはりデザインの軸となるのは「コミュニケーション」だということが分かってきました。
とにかくデザイナーの独りよがりの視点にならないよう、使う人たちはどういう人なんだろうと、実際に障がいのある方やスタッフの方と会ってたくさんヒアリングを行いました。
八田:ユニバーサルデザインも通常だと、健常者の視点から色々な人が使えるようにと考えがちですが、今回は実際に使用する方が車いすユーザーだったりと、かなり具体的だったので、実際に彼らにどんなものが欲しいのか、使いやすいのかを聞いていくことで色々と見えてくるものが多かったです。