米政府が「食肉のインフレ」抑制に10億ドルを投入する理由

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ホワイトハウスは1月3日、米国の食肉加工業界の競争を高めるために10億ドルを投入すると発表した。政府は、「ミートフレーション」と呼ばれる食肉のインフレを抑制しようとしているが、米国商工会議所はこの取り組みが「価格をさらに押し上げる可能性がある」と警告している。

バイデン政権は、3月に大統領が署名した1兆9000億ドルの「米国救済計画法」から10億ドル(約1160億円)を独立系の食肉加工会社の支援に割り当てる。これにより政府は、食肉・鶏肉業界を支配する複合企業らが価格を釣り上げて米国経済を傷つけることを防止すると主張している。

この計画には、独立系の食肉加工工場への補助金の3億7500万ドルと融資支援の2億7500万ドル、労働力開発の1億ドル、食品安全検査関連の補助の1億ドルなどが含まれている。

ホワイトハウスはまた、司法省と農務省が共同で実施する、独占禁止法に関する苦情の報告を促進するための新たな取り組みを発表した。

米労働統計局によると、昨年11月までの12カ月間の消費者物価の伸びは6.9%に達し、インフレ率は1982年以来の高水準となっている。この記録的なインフレの最大の要因は食肉価格の高騰で、牛肉や鶏肉、魚、卵の価格指数は同期間に12.8%上昇している。

食肉の価格上昇の主な原因は、労働力の不足とサプライチェーンのボトルネックとされている。米国の食肉業界では、JBS USA Holdingsやタイソンフーズなどの大手加工業者4社が市場の54%以上を支配している。バイデン大統領は、独禁法問題を重視しており競争の促進を目的とした大統領令に7月に署名した。

バイデン大統領は、3日に行われた独立系の農家や牧場主との会合で次のように発言した。「多くの産業において一握りの巨大企業が市場を支配しており、多くの場合、彼らはその力を使って小規模な競争相手を排除し、価格を釣り上げ、消費者の選択肢を減らしている。食肉業界はその典型的な例と言える」

米商工会議所のニール・ブラッドリー最高政策責任者は、1月3日の声明でホワイトハウスの政策が「見当違いだ」と非難し、バイデン政権が価格の高騰を反トラスト政策に関する「既存のアジェンダ」の正当化に利用していると述べた。ブラッドリーは政府の介入が、供給を制約し、さらなるインフレを引き起こす可能性が高いと述べている。

編集=上田裕資

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