4年に一度、数週間にわたって各国から最高の選手たちが集まり、伝説が生まれていた。
ペレからマラドーナ、クライフからベッケンバウアーにいたるまで、現役最高の選手だと主張できるのは、このレベルにいる選手たちだけだった。
それは主に、国外でプレイする選手が、いまよりも少ない傾向があったからだ。つまりワールドカップは、最高の選手が最高の選手と対戦して試される、数少ない機会のひとつだったわけだ。
だが悲しいかな、人気こそあいかわらず高いものの、この大会はもはや、世界の偉大な選手たちが集まる唯一の場ではなくなっている。
いまや、ヨーロッパ以外の地域の才能ある選手が、20代になっても母国にとどまるケースはほとんどない。そして、各クラブがスーパースターからなるイレブンを集めているため、もはや国際試合で見られる水準が最高というわけではなくなっている。
過去十年の最高の選手と誰もが認めるリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドも、伝説的な選手としての名声を、(マラドーナやペレのように)ワールドカップで築いたわけではない。
彼らの地位は、国際試合ではなく、毎週毎週、UEFAチャンピオンズ・リーグ(欧州サッカー連盟[UEFA]が主催する選手権大会)やラ・リーガ(スペインのプロサッカーリーグ)で、世界最高峰の選手たちを相手に見せるパフォーマンスに基づいている。
だが、欧州を拠点とするひと握りのチームに最高レベルの選手たちが集中しているせいで、世界のサッカー界には大きな格差が生まれている。
各国のナショナルチームでプレイするという名誉が、ヨーロッパ大陸で開催されるスーパースターたちの競演に侵食されているのだ。
世界最大のスポーツ大会が、危機にさらされている?
ワールドカップの人気は疑いようがない。
だが、FIFAも間違いなく気づいているように、そのオーディエンスの規模は、傘下組織である欧州サッカー連盟が運営するUEFAチャンピオンズ・リーグによって、急激に追いつかれようとしている。
現在の傾向が続けば、ワールドカップの決勝戦は、「最も多くの人が見るサッカーの試合」ではなくなるだろう。FIFAにとっては、きわめて悪いニュースだ。