世界が熱狂するK-POPの快進撃。「ファンダム」から読み解くマーケティングとは?

2019年NYセントラルパークでパフォーマンスするBTSを見守るファン(Getty Images)


クオリティの高い楽曲やパフォーマンスだけでなく、バラエティ、ドキュメンタリー、ファッション、ショートムービー、ファンミーティングといった多様なエンターテイメントを組み合わせ多角的な戦略を行うK-POP業界では、こうしたコンテンツ力が重要視されるという。

BTSの所属事務所HYBEのITプラットフォーム「Weverse」をはじめ、さまざまなプラットフォームにおいて、K-POPアーティストと世界中のファンがコンテンツを通して繋がっている。言語やカルチャーを超えて気軽にコミュケートできる場所がデジタル上に多彩にあることで、K-POPのファンダムは世界で急速に大きくなっていったといえる。

社会課題にも向き合うK-POPファンダムの心理


K-POPをはじめ、韓国ドラマやアニメなどのファンダムに合わせたチャンネルやデジタル広告を展開している「Degital Media Rights」は、広告エージェンシーをはじめとしたステークホルダーに対して、K-POPがもはやニッチなカルチャーではなく、メインストリームになっていることを伝導していくことが大切だと述べた。

Kcon
世界最大規模の韓流カルチャーフェスティバル「Kcon」の2019年の様子(Getty Images)

K-POP は世界中の人々から愛され、そのファンダムも日を追うごとに大きくなっている。世界中のミュージックチャートにその名前を連ね、グローバルにおいて一部のファンのみが聴く時代がいつだったのか思い出せないほどだ。

特に、BTSのファンダムである「ARMY」の影響力は圧倒的で、K-POPをメインストリームに押し上げたのも、BTSと世界中にいる熱狂的なARMYの力が大きいといえる。

HYBE AMERICAのCEOユン・ソクジュン氏が世界最大規模の音楽祭SXSW2021に登壇した際、ARMYについて語った言葉に、BTSの世界的な活躍やK-POPをメインストリームにした理由のひとつが垣間見られる。

「ファンには社会や文化を変えるほどの大きな力がある。彼らは、『変革の担い手でありたい』『自分自身も成長したい』と考えています。ファンを尊重し、成長発展を共にする戦友として扱うべきです」

社会的な課題や深刻な問題に対して、そのスタンスを明らかにしているBTS。2021年世界で最も多くリツイートされたツイートも、人種差別とアジア系の人々に対するヘイトに反対することを表明したBTSのツイートだった。

Z世代をはじめ、社会的な課題の解決を願い、その想いを消費活動に反映している人々は年々増えている。企業やブランドはこれまで以上に社会的な意義やスタンスが必要とされ、存在意義として「ブランドパーパス」の重要性を迫られて久しい。

こうしたグローバルマーケティングのトレンドと、K-POPの躍進は少なからず影響し合っているのかもしれない。ファンがコンテンツの消費者であると同時に、クリエイターとしてもその存在感を発揮していることからもわかるように、人々がエンターテイメントやアーティストに求めているものは、「単なる楽しい」から、「アーティストを通して自分自身も社会に貢献している充実感」といった「社会的意義」の要素も求められる時代になってきているのではないだろうか。

ファンダムは、今後より一層、単なるアーティストのファンとしての集団ではなく、同じ時代に共に成長し、変革の担い手として共創して、新しいエンターテイメントの境地、ひいては新しい未来を開拓していくコミュニティになっていくだろう。そして、こうしたファンダムを読み解く視点は、企業やブランドのブランディングにおいて、さらに求められる時代になると考えられる。


連載:美の多様性を読み解くマーケターの視点
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文=田辺敦子

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