朴氏が逮捕された瞬間を、私は当時駐在していたソウルの自宅でテレビを通じて見ていた。2017年3月31日午前4時29分、ソウル中央地方検察庁の地下駐車場から黒塗りの車列が出てきた。朴氏は2番目の車の後部座席中央に、硬い表情のまま座っていた。韓国メディアが当時報じた内容によれば、朴氏が最初に収監された独房は広さ約11平方メートル。室内に備えられたものと言えば、洗面台と便器、机と棚程度。折りたたみ式のマットで休み、1食あたり1440ウォン(約140円)の食事を摂る羽目になった。503番という囚人番号で呼ばれた。
あれから4年9カ月。なぜ、今になっての恩赦だったのか。韓国は通常、8月の光復節や年末に合わせて恩赦を行う。1997年12月には、金泳三大統領(当時)が当時服役していた全斗煥、盧泰愚両元大統領の恩赦を決めたことがある。これは、直前に大統領に当選した金大中当選人の進言を受け入れた形を取った。文在寅大統領の任期は来年5月まで。韓国政界周辺では、(1)12月末、(2)来年3月9日の大統領選直後、(3)恩赦なし、の3つの可能性が取りざたされていた。また、恩赦の対象も、朴槿恵、李明博の前元大統領の2人になるのかどうかにも注目が集まっていた。
元大統領府高官は24日、今回の恩赦のタイミングと対象が朴槿恵氏だけだった事情について「朴氏の健康状態を慮った結果だ」と語った。朴氏は収監後、関節痛などに悩まされてきた。元高官によれば、過去に暴漢に刃物で襲われた際にできた顔の傷の後遺症もあったという。元高官は「精神的にも追い詰められた状況だったと聞いている」と話す。法務部や治療している医師団が何度も大統領府に対し、「朴槿恵氏は収監に耐えられない」と警告していたという。