第一話:「離職率40%超え」を立て直した原動力|グッドパッチ 土屋尚史 #1
運命を変えたシリコンバレーでの衝撃
──土屋さんがデザインの領域で起業されたきっかけをお聞かせください。
私が起業をしようと決めたのは27歳の時に、祖母の遺産が見つかったことがきっかけでした。そしてそれを軍資金に、2011年にサンフランシスコに渡りました。その時は何の事業をやるか全く決めずに、とにかくシリコンバレーに行けば何か見つかるだろうと(笑)。しかしその経験が、私にとって大きなターニングポイントになりました。
2011年はちょうどUber(2010年〜)やInstagram(2010年〜)が出てきたタイミングで、シリコンバレーから多くの著名スタートアップが生まれた年。当時はAirbnbが30人規模、Uberも10人程度のチームでコワーキングスペースに拠点を構えていたような時代でした。
私は3カ月ほどサンフランシスコの会社で働いたのですが、オフィスの2ブロック先にInstagram、3ブロック先にTwitter、4ブロック先にはPinterestがいるという場所。まさにイノベーションのメッカだったのです。
その街で毎日のように開催されるピッチ大会に参加して、明らかに日本とレベルが違うと感じたのが、シリコンバレーのスタートアップが作るサービスの「UI/UXデザイン」でした。
私は日本でWebデザイン会社でディレクターとして働いた経験がありましたが、明らかに日本にあるアプリのUIはシリコンバレーのそれに比して見劣りしていました。
シリコンバレーのスタートアップはβ版の段階からUIデザインを差別化要素として非常に力を入れていて、創業者の中にもデザイナーがいる。説明がなくとも直感的に理解できるシンプルなUIデザインばかりだったのです。
それを証明するように、Instagramは初期の頃はずっと英語版アプリしかありませんでしたが、日本でもユーザー数を急成長させていきました。
この事実を見た時に、日本も「デザインの力」がもっと求められるようになると確信しました。そして帰国後、UIデザインにフォーカスしたデザイン会社を創業したのです。