ビジネス

2021.12.28 10:00

グノシーのUIデザイン担当に抜擢 それを可能にした「運」のつかみ方|グッドパッチ 土屋尚史 #2


「運」をコントロールする


──UIデザイン事業にフォーカスされた後、Gunosy(グノシー)の創業期のUIデザインを担当されるなど、一気に急成長されます。振り返ってみて、急成長の秘訣があればお聞かせください。

もちろん「運が良かった」とも言えるのですが、私は「行動量」と「出会い」を大切にすることで「運はコントロールできる」と思っています。

グノシーの創業期のUIデザインを担当することになったきっかけも、サンフランシスコでの出会いでした。当時はまだ東京大学の学生だった関喜史さん(グノシー 共同創業者)と、私が創業前にサンフランシスコで出会い、同じチームメンバーとして一週間寝泊りを共にしたのです。

サンフランシスコ
Getty Images

実際にシリコンバレーに飛び込む「行動量」と、そこでの「出会い」を大切にしていたからこそ、その後彼が創業した際にすぐに相談される「運」を掴むことができたわけです。

──グノシーのデザインを無償で手伝われたと、創業ストーリーでも書かれていますね。

すごくサービスに可能性を感じたもののデザインが酷かった(笑)。大学生からお金を取るわけにはいきませんから、我々も決して資金が潤沢では無いタイミングではありましたが無償で手伝うことを決めました。

この意思決定ができた要因を紐解くと、まず創業初期のグノシーに対して可能性を感じることのできる目を養えていたこと。そして自分たちが出せるリスクの範囲内でまず先に「Give」したこと。無償で手伝うからには本気でグノシーを成功させないといけませんから、我々も本気で「Give」しました。

この「無償で手伝う」という意思決定は決して運任せだけではできない、重要な意思決定だったように思います。

──まるで投資のような感覚で意思決定されたのですね。

起業家にとって重要な3つの素養に加えても良いくらい重要なのが「長期で物事を見る」ということです。おっしゃる通り、まさにスタートアップ投資に似ている感覚だと思います。

今となってはデザインを無償で手伝ったことを美談として語れますけれど、もちろんグノシーが成功しなかった可能性だって大いにありえたわけです。もしそうなっていたとしても、私は後悔しなかったでしょう。

まずは成功確率が高い会社を見極めること。そして我々がデザイン面で関わることでさらにその成功確率を高めること。この「長期視点での見極め力」がグッドパッチの本質的な価値源泉です。

多方面のインプットを欠かすことなく「本質を見極める力」を養い、短期的な損得だけで判断するのではなく「長期で物事を見る」。

我々の急成長は一見すると運が良いだけのように見えるかもしれませんが、私は「運をコントロール」したのだと思っています。


土屋尚史(つちやなおふみ)◎1983年生まれ。サンフランシスコに渡り海外進出支援などを経験した後、2011年9月に株式会社グッドパッチを設立し代表取締役社長 / CEOに就任。UI/UXデザインを中心に、スタートアップから大手企業まで数々の企業サービスのデザインを手がける。自社でもデザイナー向けキャリア支援サービス「ReDesigner」やクラウド型ワークスペースツール「Strap(ストラップ)」など数多くのサービスを立ち上げる。2020年6月には東証マザーズ市場への上場も果たした。

文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事