ビジネス

2021.12.29

「ナレッジの循環」を社内の最優先目標にする理由|グッドパッチ 土屋尚史 #3

グッドパッチCEO 土屋尚史 (提供=DIMENSION NOTE)

「デザインの力を証明する」をミッションに掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)に欠かせないUI/UXデザインのリーディングカンパニーとして存在感を高め続けている株式会社グッドパッチ。2020年には東証マザーズ上場も果たした。そんな同社を牽引する代表取締役社長/CEO 土屋尚史氏に、起業家にとって重要な素養、成長事業の創り方などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた(全4話中3話)

第一話「離職率40%超え」を立て直した原動力|グッドパッチ 土屋尚史 #1
第二話グノシーのUIデザイン担当に抜擢 それを可能にした「運」のつかみ方|グッドパッチ 土屋尚史 #2


──スタートアップでは安価な価格で仕事を受けるものの、なかなか単価を上げられずに苦労する会社も多いです。その点はいかがお考えでしょうか?

まず前提として「単価を上げる」ことに関しては、創業時から強い使命感を持っていました。なぜならば日本においてデザインが適正単価で扱われていないと考えているからです。

日本のデザイン会社が適正単価で仕事をしないことでマーケット全体の価値が下がり、デザイナーの市場価値が下がり、平均年収も低くなる。こんな負のサイクルが働くマーケットでは、決して優秀な人材は入ってきてくれません。

なので、デザイナーの価値を上げるために「業界単価基準を引き上げる」ことはグッドパッチのミッションの一つだと思っています。

特にUI/UX領域では我々がマーケットリーダーとして一番価格交渉力を持っているので、我々が安易な値下げをすることは絶対にやってはいけないという、一種の使命感を持って仕事をしています。

その前提があった上で、実際に単価を高めるためにはいくつかの必要要素があります。

一つ目はマーケット自体が拡大してサービスに対するニーズが増えること。当然ながら価格は需要と供給のバランスで決まるので、需要に対して供給が追いついていないマーケットでは価格が上がっていきます。

我々のメインサービスであるUI/UXデザインも、スタートアップの資金調達環境が圧倒的に良くなったことでデザインに対する投資が増えたり、大企業も続々とUIデザインに投資をするようになったりしたことで、需要に対して供給が全く追いついていない状況です。

二つ目の要素が仕事のクオリティ。顧客の期待値を超えるアウトプットを出し続けないと、いくらマーケットニーズが大きくなっても、いつかバブルのように顧客は離れていきます。

グッドパッチと同時期に創業したUI/UXデザインの会社はいくつもありましたが、その中でグッドパッチだけがこれだけ大きくなれたのはやはり、アウトプットの質を高め続けることができたからでしょう。

需要が伸びている市場で最高のパフォーマンスを出し続ける。

極めてシンプルですが、これが「単価を上げる」上で欠かせないポイントなのだと思います。
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文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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