小さな組織であってもファンを増やすためにはどうすればよいのか。限られたリソースの中で商品にどのようなストーリーを吹き込んでいくべきなのか。「中小企業のブランド戦略のカギ」をテーマに2人が語った。
クラフトビール「COEDO」に見る復活の方程式
トークセッションは、協同商事のコエドブルワリー(埼玉県川越市)が生産するクラフトビール「COEDO」の試飲から始まった。
協同商事は2019-2020の大会でグランプリを獲得し、クラフトビール市場の立ち上げを牽引した企業の1つとして知られている。多くの食品メーカーがコロナ禍の影響を受ける中、2021年度も増収増益を達成。成功を収めているようにも見えるが、その道のりは決して平坦なものではなかったという。
同社は1996年に「小江戸ブルワリー」を設立。当時のブームに乗り、地ビール事業に参画するも、1998年以降ブームが終焉に向かうのと同時に売上が低迷した。そんな中、2006年にリブランディングを決意。現在の定番となっている5種類の味を新ブランド「COEDO」として同時発売したことが転換点となり、2010年には世界最大規模の商業用ビールコンテスト「ワールドビアカップ」を初受賞するまでに至った。
協同商事 コエドブルワリー代表取締役兼CEO 朝霧重治
その道のりを聞いた山口は、ブランディングを「製品の持つ意味をつくっていく作業」と定義したうえで、地ビールブームの終焉とともに消えていった企業と、コエドブルワリーのようにその後復活を果たした企業の違いを、次のように説明した。
「賞味期限の非常に短い言葉でブランディングしてしまうと、時代とともに沈没していきます。その一方で、お客さんは正直で、いくらブームで盛り上がっていても、美味しいかそうじゃないかという判断軸で最終的には切り捨てていくもの。だから、本当に良いものをつくり続けられなければ、やっぱり消えていくことになる」