漁業と居酒屋が一体となったビジネスモデルに確かな手応えを感じていた五月女社長。コロナ前までは、経営する10店舗の居酒屋を、新鮮な魚が食べられる海鮮居酒屋へと全面リニューアルする計画も準備していた。
しかし、その順風満帆な時にコロナ禍に突入。半月で4000人以上の宴会がキャンセルとなり、売上は95%も落ち込んだ。壊滅的な打撃だった。
同社の運営する居酒屋は、特にコロナの影響を受けやすい業態だったといえる。東京・新橋などのオフィス街を中心に出店していたため、リモートワークの拡大と宴会自粛が直撃した。
「コロナは長期化する」。そう考えた五月女社長の決断は、速かった。
全店閉鎖、ペットフード事業へ
2020年春には、全10店舗のうち、9店の閉鎖を決定。1店舗を残したのは、「再開の芽」を残すためだった。だが、その最後の1店舗も翌年、閉じることに決めた。
まさにゼロからの再出発を、どのようにすべきか。五月女社長は、これまで培ってきた漁業と水産加工の礎を見つめ直し、この年の12月、魚を加工した「ペットフード」の販売に乗り出した。
材料は魚だけの完全無添加。ネット販売で、全国の愛猫家に届けている。五月女社長によると、顧客からは「ペットフードを変えてから、猫の体調がよくなった」という声も寄せられ、手応えを感じているという。
季節の小魚フレーク(小パック130-150g入り472円〜)
PRの力が再出発を後押し
再出発にあたっては、またもPRが力強い武器となった。全国放送、全国紙など、数多くのメディアが、ゲイトの大胆な業態転換を報じたのだ。
「親子で須賀利町を訪れてもらい、漁とペットフード作りを体験できるツアーも始めました。愛猫と一緒に宿泊することもできます。単なるペットフード販売にとどまらず、この複合的な取り組みをさらに発展させていきたい」
漁を起点に、居酒屋からペットフードのネット販売、さらには体験型ツアーへ。逆風にも屈しない、五月女社長の新たな挑戦は始まったばかりだ。