ビジネス

2021.12.28

「絆徳経営」って何だ? 成長を生む新しい経営スタイルとは


鮎川氏は、社会をピラミッド型にするのではなく、ダイヤモンド型の構造によって、「中間層」を増やし、「理念」と「経済合理性」を矛盾なく両立させる産業の実態を作り上げました。

ピラミッド型の社会を考えてみましょう。社会のトップ層が「仕事が出来る人だけが評価されればいい」という考えに陥ると、上層部にだけ富や英知が集中して、ピラミッドの頂点がどんどん細く尖ってきます。こういったピラミッド型の構造では、格差や分断が生まれ、貧困層がどんどん増えていく構造になります。

会社で言えば、上層部が手厚い待遇を受ける一方で、大多数の社員は生産性の低いまま放置されるので、徐々にやる気が無くなり、顧客や社会との絆も失われてしまいます。結果、社員が定着しない、トラブルが起きる、そして、会社が破綻するといった事例は枚挙にいとまがありません。これがピラミッド型組織の末路なのです。

この破綻に陥らないためには、「雇用と教育」によって「中間層」を増やす事が重要です。「中間層」とは、一般的には仕事に就いて豊かな社会生活を送ることができる階層を意味しています。会社で言えば、一定以上のスキルで活躍するリーダーやマネージャー層。とはいえ、経験の浅い新人が多数存在する会社が多いのも実情です。そこでこの状況を改善すべく真っ先に取り組むべきが「教育」なのです。



先ずは、「教育」によって「中間層」を増やしていく。すると、ピラミッド型の下層が底上げされて、ダイヤ型へと形成される。つまり、「雇用と教育」が上手くいけば、顧客・社員・社会の「三方よし」が完成するわけです。

さらに、会社が進化すると、ダイヤの下を尖らせていた落ちこぼれる人が減り、社長が孤独にダイヤの上に君臨した状態から幹部層が増えて経営チームができ、ダイヤ型の左右にいる会社の理念に共感出来ずはみ出す人が減ってくるので、ダイヤ型の角が取れて、丸みを帯びたダイヤ型となります。この「丸みを帯びたダイヤ型」の組織こそ、鮎川氏がモデルとした現代企業の理想形です。

「絆徳経営」は、私の造語ですが、その究極の目標である「丸みを帯びたダイヤ型」は、鮎川義介氏が好んで使ったシンボルに範を取ったもの。この経営理論は、机上の空論などではなく、日立、日産、日本水産、日本テレビ、日本ビクターなど、数多くの実態ある企業グループ「日産コンツェルン」を作り上げた鮎川氏だからこそ、リアリティがある図なのです。

文=中村麻美

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