脱炭素社会の切り札、グリーン水素の見通しは明るい

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米国ニューヨーク州を拠点とするプラグパワー(Plug Power Inc.)は2021年、ニューヨーク州ロチェスターで燃料電池と電解槽の製造プラントの操業を開始した。そして同社はその際、「クリーンエネルギーを利用して生産された水素」は次なるビッグウェーブだと断言した。クリーン水素の時代は目前に迫っている。

そして実際、プラグパワー・イノベーションセンター(Plug Power Innovation Center)は、世界経済の脱炭素化の根幹を担う電解槽の生産を加速させようとしている。

こうした状況を支えているのは、太陽光発電と風力発電のコスト低下だ。そして現在、ハードウェアの低価格化も進んでいる。なかでも、水を水素と酸素に分解し、水素生産の根幹を担うハードウェアである電解槽の低価格化が顕著だ。

一方、各国政府は水素をネットゼロ実現の起爆剤とみなしており、研究開発に多額の資金を投入している。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスが発表した報告書『水素経済アウトルック(Hydrogen Economy Outlook)』によれば、水素は2050年までに世界のエネルギー需要の24%を供給し、二酸化炭素排出量を34%減少させる可能性がある。ただし、それには積極的な政策転換と、新たな投資が必要だ。

すべての条件が揃えば、風力と太陽光によって生産された水素の価格は、1kgあたり0.8~1.6ドルになる見込みであり、これは天然ガスとほぼ同等だ。

前方は青信号


プラグパワーのアンディ・マーシュ(Andy Marsh)CEOによれば、同社は2022年第3四半期には、1日あたり70tのグリーン水素を生産可能になる。比較すると、化石燃料を利用した水素の生産量は現在、世界全体で1日あたり300tだ。つまり、2022年の水素生産の約20%はクリーンエネルギー由来になるとマーシュは言う。

グリーン水素は、その他の再生可能エネルギーと同様のコスト低下をたどると考えられており、ゆくゆくは交通機関の燃料のなかでもっとも低価格になるだろう。

トヨタとヒュンダイは、水素に大規模な投資をおこなっている。国際的な運送会社のフェデックスはニューヨーク州で、水素を燃料とする配送トラックを稼働させている。このトラックは、満タンの状態から240km走行可能だ。一般的な水素ステーションは、1日に400台の車両にサービスを供給でき、1台につき3分で充填が完了する。

水素のアドバンテージは、豊富に存在しており、再生可能で、汚染を発生させないことだ。水素を利用する燃料電池車が排出するのは水蒸気だけだ。ただし、パイプラインを使って水素を輸送するには、天然ガスよりも約30%余分にコストがかかる。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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