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2021.12.26 17:00

ファッションにも法律を。編集出身、異色の弁護士

2021年1月、ファッション・ローを専門とする弁護士チーム「ファッション・ロー・ユニット」を法律事務所内に発足させた。立ち上げたのは海老澤美幸。長年、ファッション誌のエディターとして活躍した経歴をもつ異色の法律家だ。

「ファッション・ロー」は、ファッションにかかわるさまざまな法律問題を扱う法分野。コピー商品による知的財産権の侵害や取引の契約違反、最近では「文化の盗用」やジェンダー、SNSでの炎上など、企業のブランド価値毀損につながる問題も多く、関心も高まってきた。

海老澤は、大学法学部卒業後に旧自治省に入省したが、「ファッションの仕事がしたい」と周囲の反対を押し切って1年で退職。ファッション雑誌の編集部に入り、04年にファッションエディターとして独立した。きらびやかなファッション業界で直面したのが法律問題。業界独自の商慣行が優先され、契約書がつくられず、不払いになっても泣き寝入りが起きやすい。弁護士に相談するにもハードルが高く、当時はファッション・ローという言葉も知られていなかった。

「それなら自分がなって、クリエイターや業界の人が法律相談できる窓口をつくろうと思いました」。一念発起して法科大学院に入学、17年に弁護士登録をした。

冒頭の弁護士チーム「ファッション・ロー・ユニット」は、知的財産権に詳しい元裁判官や大学教授、プロカメラマンとしても活躍する弁護士らが連携。個別の法律相談だけでなく、法改正など行政への働きかけも行う。業界全体のリテラシー底上げのため、クリエイターや若い世代への啓もう活動にも積極的だ。

いま、新たな課題として取り組んでいるのがテクノロジーの進歩とファッション・デザインの保護だ。「実際の服のデザインを真似てゲームのアバターの衣装として販売、利益を得ても法的な責任は問いにくく、苦労してつくったデザイナーにお金は払われないのが実情。法改正を含め、早急な解決が必要だと思います」。


えびさわ・みゆき◎東京都出身。慶應義塾大学卒業後、1998年に旧自治省(現総務省)入省。99年宝島社のファッション雑誌編集部に転職。2003年に渡英、デザイナー・スタイリストに師事して修業、04年にファッションエディターとして独立。17年弁護士登録。19年より三村小松山縣法律事務所に所属。

文=成相通子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.086 2021年10月号(2021/8/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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