入山:僕がまず若い人たちに言いたいのは、あまり僕ら世代のアドバイスは聞かない方がいいということです(笑)。
今の若い人たちは、少なくとも僕の時代よりもよっぽど自由に楽しく好きなことをやっていて、面白い人がたくさん出てきています。僕のような古い時代にとらわれている人間の成功体験や失敗体験をシェアしても、あまり役に立たないと思います。ですから、オジサンが偉そうなことを言っていたら無視しましょう。
ただひとつ、今のバーバルさんのお話にインスパイアされたんですが、「成功を目指すより、好きなことをやる」、ということは大切にしてほしいですね。パッションをもって好きなことをやっていたら、あとで結果がついてくるものだと思います。
僕も実際にそうで、好きなことしかやってきませんでした。中には失敗していることもあるかもしれないけれど、あんまり気にしません。うまくいっているかどうかすら気にしないですね。僕は好きなことを、パッションを持ってやってきて、その結果いろんな方に注目していただいたり、本が売れたり、そういう風になってきました。
実は昨年からテニスのプライベートレッスンを受けているんですけど、最近コーチから「うまく打とうと思うな」とよく言われるんです。
うまく打とうとか、いい感じでコートに入れようとした瞬間に、身体のどこかが縮こまるらしくて。「ボールすら見るな」くらい極端なことまで言われます(笑)。たしかに無心でスパンと打った方がうまくいくんですよね。これってなんだか仕事と一緒だなと思いました。
バーバル:深いですね!「Style over substance(中身より格好を重視する)」はよくない。カッコつけると根幹のところをミスってしまいますから。カッコよくスイングしてミスするより、カッコ悪くてもミスしない方が絶対にいい。すべてのことに言えますよね。
入山章栄◎早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所を経て、2008年に米ピックバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。2013年から早稲田大学大学院経営管理研究科准教授。2019年から現職。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』『世界標準の経営理論』
VERBAL◎m-flo、ラップグループTERIYAKI BOYZ(R)、クリエイティブユニット PKCZ(R)、HONEST BOYZ(R)のメンバー。国内外の数多くのアーティストとコラボレーションも行う。そのスタイルはファッション界からの注目も熱く、2008年にはデザイナーのYOONと共に2008年にファッションブランド「AMBUSH(R)」を創業しCEOを務める。これまでに Louis Vuitton(Kim Jones)、NIKE、sacai、Rimowaなど錚々たるブランドともコラボレーション作品を発表している。2016年9月に初の路面店、AMBUSH(R) WORKSHOPを渋谷にオープン