捜査令状で見えたグーグルの「児童ポルノ検出」の舞台裏

Chris Jackson/Getty Images

ハイテク企業は、自社のプラットフォーム上で増加し続ける児童の性的虐待に関するコンテンツへの対処を求められている。そんな中、アップルが人々のデバイスをスキャンして違法なコンテンツを探す試みは、プライバシーに関する懸念に直面して延期に追い込まれた。

このようなコンテンツは、米国の法律で違法となる可能性があり、グーグルの児童ポルノ発見システムのCSAMによって検出可能だが、この事実はこれまで一般には語られてこなかった。

グーグルは、以前から同社の2つの技術で児童ポルノを監視できることを認めていた。その1つはユーチューブが開発したソフトウェアで、過去に検知された違法コンテンツの「ハッシュ」を探すものだ。例えばGメール内のファイルをスキャンして、不正なコンテンツと同じハッシュを持つファイルがあれば、フラグを立てることができる。また、グーグルは機械学習ツールを使ってファイルを分析し、児童虐待コンテンツを検出できる。

フォーブスが入手した捜査令状で、2020年末にグーグルがカンザス州のユーザーの、ドライブ内から「子供が性的行為に及ぶ様子を描いたデジタルアートや漫画」を検出していたことが明らかになった。検出プロセスで、この2つの技術のどちらが使われたかは明らかになっていない。

捜査令状には、未成年の少年を描いた性的に露骨なコンテンツに生々しい画像が含まれていたことが詳細に記されている。グーグルは、法的要件に従いデータへのアクセスに使用されたIPアドレスを全米行方不明・搾取児童センター(NCMEC)に伝え、NCMECは国土安全保障省(DHS)にそれを報告した。

捜査官は、IPアドレスをもとに、漫画の所有者とされる容疑者を特定し、彼のグーグルアカウントを捜索して、容疑者が交わしたEメールの情報を入手した。

容疑者は有名アーティスト


その結果、容疑者が有名なアーティストである可能性が浮上した。起訴されていないため、フォーブスは彼の名前を公表しないが、この男性は、中西部の小規模なアートコンテストで何度か受賞したことがあり、1990年代のある作品が西海岸の大手新聞で紹介されたことがある。

この件は、ヌードと関わりを持つ一部のアーティストを不安にさせるかもしれない。しかし、漫画の表現に関する法律は、アートや研究目的のために子供の性的行為のアニメーションを所有する人をある程度保護するようになっている。このようなコンテンツを所有している人を有罪にしようとする検察官は、その画像が「わいせつ」であること、または「文学的、芸術的、政治的、科学的な価値」を欠いていることを証明しなければならない。
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編集=上田裕資

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