ビジネス

2021.12.29

「ヒトとモノの輸送」を1台でこなす自動運転企業Motionalの試み

(c)Motional

2010年代前半から中盤にかけて、グーグルが自動運転システムの開発を本格化させたとき、その焦点はほぼヒトの移動に絞られていた。しかし、その実用化が様々な困難に直面するなかで、企業の多くは、モノの移動に目を向けるようになった。その中でも最近、自動運転による食品や荷物のデリバリーに取り組んでいるのが、自動車部品のサプライヤーのAptivと現代自動車が設立した合弁会社のMotionalだ。

Motionalは、2018年からラスベガスでリフト(Lyft)のプラットフォームで有料の乗客を運んでおり、2023年からラスベガスでロボットタクシーサービスを開始すると発表した。

ウェイモやアルゴAI、GMのクルーズなどは、数年前から自動運転のプロトタイプを配送に使用している。クルーズは先日、自動運転のモビリティサービスの専用車両である「クルーズ・オリジン」向けのロッカーモジュールを公開した。このモジュールは、需要の変化に応じて、車内のスペースを人と荷物向けに最適化するものだ。

Motionalは12月16日、ウーバーイーツと提携し、2022年初頭からカリフォルニア州サンタモニカでフードデリバリーのテストを開始すると発表した。Motionalは現地ですでにロボットタクシーのテストを進めているが、フードデリバリーに使用する現代自動車のiONIQ 5をベースにした車両には、荷物や調理済み食品の収容性を高めるための変更が加えられるという。

荷物や食品のデリバリーと、ロボタクシーの組み合わせは、非常に意味のあるものになる。配車サービスの車はヒトを乗せて目的地に向かうが、乗客を運んだ後は、空車で帰る場合が多く、いわゆるデッドヘッドマイルが蓄積される。デッドヘッドマイルは、コストや時間、エネルギーを浪費し、交通渋滞の原因となる。

これに対し、荷物のデリバリーは、1回の運行で複数の配達をこなしたり、スケジュール化することが可能で、人の輸送よりも有利なエコノミクスを実現できる。

自動運転テクノロジーを開発・導入するすべての企業に重要になるのは、あらゆるタスクに車両を適用させるフレキシビリティだ。これにより、自家用車の典型的な利用率の4〜5%をはるかに上回る利用率を達成できる。単一目的の自動車は渋滞を悪化させるが、複数の役割を担う自動運転車の導入は、渋滞の解消につながる可能性がある。

編集=上田裕資

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