ビジネス

2021.12.25 17:00

業界の激変とコロナ禍に「だからどうなのさ」、の胆力

サッポロホールディングス 代表取締役社長 尾賀真城

「2021年の夏は、最悪の3カ月でした。ただ、10月以降はビール類の出荷が少し戻り、11月は前年比で2桁増です。変異株の話もありますが、どこかで平常に戻ると期待を込めながらやっているところです」

サッポロビール工場跡地を再開発した恵比寿ガーデンプレイスが開業して27年がたつ。21年2月に三越が閉店し商業棟は改装工事中だが、イルミネーションの季節とあって人出は多い。サッポロホールディングスを率いる尾賀真城は、ホッとした表情で直近の状況を明かした。

新型コロナウイルスに翻弄された1年半だった。社内に動揺が広がったのは、20年4月、最初の緊急事態宣言が発令されたときだった。

「幸い前年に全社員のPC通信環境を更新したばかりで、テレワークの体制は整っていました。ただ、店で生ビールを1カ月以上も飲めなかったのは、うちの社員にとっておそらく初めて。戸惑った社員が多かったのでは」

尾賀にとっても、外で生ビールを長期間飲まなかったのは会社員人生で初めてだった。緊急事態宣言の解除後、3密に気をつけながら会社の近くで飲んだ一杯は、格別の味だったという。

「我々の商売上、ビールを販売してもらえる喜びは大きかったですよ。ただ、それ抜きに、ひさびさの生ビールはとにかくおいしかった。お客様も、絶対にビールを待っている。あらためてそう感じました」

一息ついたのも束の間、その後もコロナは容赦なく襲いかかる。2020年、主力ブランド「黒ラベル」缶は家飲み需要の追い風もあり前期比110%と好調だった。しかし、業務用の中核となる瓶と樽がビール全体で前期比59%に。その影響から、2020年12月期(連結)は、最終利益がマイナス160億円と22年ぶりの赤字になった。尾賀は、「心構えはできていなかった」と言いつつ、前を向く姿勢は崩さなかった。

「いい意味での開き直りです。赤字の理由が自分たちに起因していれば落胆して大いに反省するところですが、業務用の赤字は致し方ない。赤字とはいえ、気持ちの切り替えができる決算でした」

実際、打てる手は打っている。例えば『銀座ライオン』などを展開する外食事業では、不採算店を閉店する一方、21年は食事主体の小型店やメンチカツテイクアウトの新業態の展開をスタートさせた。

「一歩下がらなければいけないところもあれば、一歩進むところもある。いまできることを考えて、それをやるだけです」
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文=村上敬 写真=苅部太郎

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