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2021.12.29

ユニコーン化間近の米リーガルテック企業「Notarize」の実力

(c)Notarize

連続起業家のパット・キンセル(36)は、2013年に自身が創業した地域情報アプリ「Spindle」をツイッターに売却したが、その際に彼を悩ませたのが、契約の締結に必要な公証手続きだった。米国の企業が公証が必要な契約書を交わす場合、公証人(Notary Public)による認証(Notarization)を取得しなければならない。

キンセルは2015年に、面倒な公証プロセスをオンライン化するスタートアップの「Notarize」を設立した。同社のサービスの顧客は、ビデオチャットでつながった公証人から認証を受けられる。



事業を立ち上げるにあたりキンセルは、オンラインで行う公証が対面で行うのと同様に安全であることを、規制当局に理解させる必要があった。そこで力を発揮したのが、共同創業者のAdam Paseだ。彼は、かつて民主党のデニス・ムーア下院議員の政策顧問を務め、その後の7年間、起業家のためにロビー活動を行っていた。2人の働きかけによって、最終的に38の州でオンライン公証を認める法案が成立した。

Notarizeの事業は、その後いくつかの危機に直面したがパンデミックを追い風に急成長を遂げた。2020年春に各地でロックダウンが敷かれると、住宅ローンの金利が低下したことを受けて住宅の販売件数が伸び、同社のオンライン公証サービスの需要も高まった。Notarizeの2020年の売上は前年比約6倍の約2500万ドルに達した。

今では2200社の法人顧客を持つNotarizeの公証サービスは、不動産マーケットプレイスのZillowなどの大手にも採用されている。Notarizeは2021年3月、フィンテックに特化したベンチャーキャピタルのCanapi Venturesが主導したシリーズDラウンドで、1億3000万ドルを調達し、評価額を7億6000万ドル(約860億円)に上昇させた。

Notarizeはまた、フォーブスがユニコーンになる可能性が最も高いと思われる25社を選出する企業リスト「ネクスト・ビリオンダラー・スタートアップ(Next Billion-Dollar Startups)」の最新版にも選出された。

「私は、社会に変革をもたらすテクノロジー企業を作りたいと思っている」と、キンセルは語った。

編集=上田裕資

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