サッカーチームが存続の危機に。「救世主」が語る、波乱の3年間

バングラデシュのプロサッカーチーム「ムクティジョダ」を引退した加藤友介

2021年11月25日、1人のプロサッカー選手が引退を発表した。その名は、加藤友介。

Jリーグのファンには馴染みのない名前かもしれない。加藤はアルゼンチンを皮切りに、日本のJFL、インド、タイ、香港、インドネシア、モンゴルを経て、最後はバングラデシュと8カ国のチームを渡り歩いた選手なのだ。

加藤は、初めてプロ契約を得たアルゼンチンでは5年半を過ごしたものの、その後はほぼ1シーズンごとに国やチームを変え、最後にたどり着いたのがバングラデシュだった。

バングラデシュでは、選手としてだけではなく、消滅危機に陥った所属チームを救う「救世主」としても注目される存在となった。

選手引退を発表したあとも、加藤は「アシスタントマネージャー」の肩書きを持って、チーム存続のために奔走している。

コロナ禍でチームは財政難に


加藤がバングラデシュのプロサッカーチーム「ムクティジョダ」(Muktijoddha Sangsad Krira Chakra)に加入したのは2018年。加入と同時にキャプテンにも選ばれた。ところが2シーズン目を戦っていた2020年、コロナ禍でリーグ戦はストップ。加藤の契約も白紙となり、一時、日本に帰国した。

幼い子どもを持つ加藤は、そのとき「次に所属するチームは家族同伴で渡航できる、もっと安全な国で」と考えていた。

しかし2020年末に、ムクティジョダのマネージャーから「チームが大変だ、助けてくれないか」と連絡が入る。コロナ禍の影響などで、オーナーが金銭的問題を抱えて、チームの権利を放棄。突然、運営資金不足に陥っているというのだ。

断ることも可能だったが、加藤はその窮状を聞いてチームに戻る決断をした。

「アルゼンチン以降、2年連続で同じチームと契約したことがなかったので、思い入れがあったこともひとつの理由です。キャプテンを任されて信頼してもらっていましたし、チームメイトが大変なときに、僕だけ逃げてしまうのも嫌だなと思いました」

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ムクティジョダのチームメイトと

「あと1年だけ」そう決めて、加藤はチームに戻った。

とはいえ、長引くコロナ禍で、チームの状況は改善されるどころかますます悪化していったという。加入以来、加藤が感じていたチーム運営体制の脆弱さもあり、解決への道はますます険しいものになっていったという。
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文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨

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