ただ、この分野に携わる企業が避けて通れない課題もいくつかある。難題のひとつはやはり、仮想世界と現実世界の架橋にかかわるものだろう。ARやVRといった技術が患者の治療で安全に使えるかどうかを正しく理解するには、多くの臨床試験や使用事例を通じた検証が必要になる。
また、メタバースで患者の個人情報をどう守るかも問題だ。社会がますますテクノロジーに依存するようになるなか、それに付随する脆弱性や、サイバーセキュリティーをめぐる懸念に対してはとくに留意する必要がある。
企業はさらに、技術開発にあたっては患者の安全性だけでなく、医療の人道的側面にも配慮しなくてはならない。医療とは本来、たんに症状を治すだけでなく、患者を全人的に療やすものだからだ。
AR/VR技術は医療にとっても非常に大きな可能性を秘めるものだが、医療を長らく定義してきた繊細で人道的、そして不可侵の患者・医師関係を損なわないように開発を進めていくことが求められる。