一方、その成長と比例するように、パートナー企業の発送・集荷時のオペレーション負荷が増加している。例えばコンビニでは、店頭で配送される荷物の約80%をメルカリの出品物が占めているという。
さらに、2020年の日本の宅配便取扱個数50億個のうち、5~10%をメルカリの荷物が占めるというデータもある。日本全体の物流におけるメルカリの取扱量が増加の一途をたどっているのだ。
このような中、同社は10月28日に物流サービスを担う子会社「メルロジ」を設立した。CEOに就任したのは、メルカリでマーケティングなどを統括する野辺一也。「お客さまとの接点でもある“発送”や“受付”をパートナーに依存せず、メルカリが直接ハンドリングして最適化していくため」と設立の目的を語る。
COOには、イオンでネットスーパー事業を手掛け、アマゾンジャパンやヤマト運輸など物流業界で活躍してきた進藤智之が就任した。
メルカリはまだまだ向上の余地がある
野辺は、前職のローソンで上級執行役員マーケティング本部長を務めた経歴があり、当時の経験が、メルロジの発足に影響しているという。店舗から「メルカリの発送が増加しているため、店員の負担も大きくなっている」と耳にしていたのだ。
また、メルカリのユーザーからも、「出勤途中にコンビニから発送しようと思っても、買い物客が並んでいると躊躇してしまいがち」「初めての発送で聞きたいことがあっても、店員の知識が十分でなかった」など、不満の声が挙がっていた。
野辺はこうした意見を踏まえて、「発送時の体験価値は、まだまだ向上の余地がある」と考えた。
強みはメルカリポストで得たデータ
メルロジが目指すのは、月間利用者である2000万人分の取引データとテクノロジーを活用した、新たな集荷物流網の構築だ。そのベースになるのが、2020年から始めた「メルカリポスト」である。
メルカリポストは、非対面で「ネコポス」「宅配便コンパクト」の発送ができる投函ボックス。現在はコンビニやドコモショップなど、全国約1000カ所に設置している。アプリ内で発行されたQRコードをポストのリーダーに読み取らせることで伝票が印刷され、それを荷物に貼り付けて投函する仕組みだ。
これにより、メルカリポストには膨大なトランザクションデータが蓄積される。どのエリアからどのエリアに対する配送が多いのかのほか、投函が多い時間帯、梱包サイズといったデータも得られるため、荷量が多い場所を特定して集荷の精度を上げるなど、効率的な集荷物流網の構築が可能になる。
「従来のポストでは、どこにどれだけの荷物があるかわからないので、ルートをくまなく回って集荷する必要がありました。しかしメルカリポストでは、事前に投函された荷物の量がわかるので、集荷時に無駄がなくなります」
メルカリポストは、ユーザーの継続利用率も7割と好調で、ポストを起点とした集荷物流網を外部開放することも視野に入れている。