経済・社会

2021.12.25 11:30

日本の金融課題は解決できる!ヒントに満ちた改革者の手引き

Forbes JAPAN編集部

各界のCEOが読むべき一冊をすすめるForbes JAPAN本誌の連載、「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、400F代表取締役社長 中村仁が『ゼロ・コミッション革命 チャールズ・シュワブの「顧客目線」投資サービス戦略』を紹介する。


政府が「貯蓄から資産形成へ」というスローガンを掲げてから20年。日本の家計が保有する金融資産は2000兆円に迫り、コロナ禍でも過去最高を更新しています。同様に、米国でも家計の金融資産額が過去最高を更新していますが、その額はけた違い。日本の3倍強の人口で、金融資産額は6倍と、ここ30年で日米の豊かさには大きな差が生じています。それはなぜでしょうか。

私は、その鍵を握っているのが、本書の著者であるチャールズ・シュワブだと考えています。彼は、米国の株価が低迷していた1970年代に証券会社を立ち上げ、株式の売買手数料を無料にするなどのサービス革命を起こして顧客の心をつかみ、金融資産を増やすことに貢献しました。その結果、彼が創業した証券会社は、世界最大級の預かり資産を誇る規模にまで成長しています。

証券会社に入社し、NYで勉強する機会を得た私は、彼が創業したチャールズ・シュワブという証券会社を徹底的に調査しました。見えてきたのは、投資信託の乗り換え手数料をゼロ円にする画期的な施策や401Kによって「残高を伸ばす仕組み」をつくると同時に、富裕層だけでなく、「中間層」の顧客が投資しやすい環境を整えたことでした。

日本では、金融資産5000万円未満のアッパーマス層と3000万円未満のマス層、まさに「中間層」が世帯数シェアの90%、かつ、金融資産シェアの60%程度を占めており、「貯蓄から資産形成へ」を実現するためには、この層を動かさなくてはなりません。しかし、この層に正面から向き合う金融機関は少なく、ネット証券も、口座数では従来の証券会社を上回ったものの、預かり資産額ベースで追い抜くまでには、まだ相当な年月がかかります。

たんに手数料を安くすればいいのではなく、チャールズ・シュワブが行ってきたような顧客目線のサービスをどうつくり、どう提供していくのか。本書には、日本の金融業界が抱えている課題を解決するヒントがたくさん隠されています。

私がCEOを務める400Fは、最新のテクノロジーを活用し、お客さまのお金に関する悩みを解決することが目的です。

誰しもやりたいことに挑戦しているときに幸せを感じます。その挑戦を妨げている要因のひとつが「お金」の問題です。そこで私たちは、お客さまにとってよりよいサービスはなんだろう、自分たちができることは何だろうと常に考え、お客さまの「やりたいをやる決断」ができるよう、日々、開発を進めています。

いま、皆さんの悩みを解決する、新しい金融の仕組みづくりが進んでいます。多くの方に、解決への一歩を踏み出してほしいと思っています。

title / ゼロ・コミッション革命 チャールズ・シュワブの「顧客目線」投資サービス戦略
author / チャールズ・シュワブ
date / 一般社団法人金融財政事情研究会 2640円/532ページ


チャールズ・シュワブ◎1939年生まれ。スタンフォード大学卒。低コストのオンライン取引で知られ、アメリカで広く展開する金融サービス、チャールズ・シュワブの取締役会会長兼共同経営責任者。71年にサンフランシスコで創業した同社は、現在では、リテール証券業界で世界最大級の時価総額を誇る。また、失語症の当事者として、チャリティ活動も行う。

なかむら・じん◎
関西大学卒業後、「野村證券」に入社。NY事務所にて米国金融業界の調査、日本の金融機関への経営提言を行う。帰国後、野村證券の営業戦略立案などを経て、2016年に「お金のデザイン」に入社。17年より、同社代表取締役CEO。2018年より、現職。

構成=内田まさみ

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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