コレクティブの存在意義は、投資家と起業家の間での認識のズレを最小化するために、アフリカの各地域および各ステージのスタートアップに対する投資プラクティスと関連書類を共通化させること、投資家同士でのシンジケート投資を促進させること、アフリカン・テック・エコシステムに関する知識とインサイトを共有すること、起業家と投資家をサポートするような法整備に向けたロビー活動を行うことだ。
具体的な活動内容は、タームシートやデューディリジェンス・チェックリストの標準化、エコシステム関連の各種報告書やインサイトの収集・整理、VCやアクセレレーターなどのデーターベース作成・公開、スタートアップ法整備に向けての関連メンバーの招集などだ。
現在、コレクティブのウェブサイト上では、VCディールのデータベースや、資金調達に関連するさまざまなリソースが集約されているほか、南アフリカにおけるスタートアップ法整備に向けたロビー活動の進捗などの情報もアップされている。
2021年のアンカンファレンスでも、投資家の間ではオープンソース化や情報共有の仕組みづくりに関して、度々議論された。たとえば、バリュエーションに関するデータの共有。各VCがすべての実データを公開することは難しいが、アノニマスに企業価値評価に関するマルチプルを共有することは、エコシステムにとってのメリットが大きい。VCが機関投資家にアプローチする際に有用であるとともに、起業家が資金調達にあたって、自身のスタートアップをより的確に評価し、投資家にアプローチするのに役立つ。
情報共有に関しては、VCがそれぞれのポートフォリオ企業が持つナレッジやリソースを集約させて、ポートフォリオ企業内で共有、さらにはVC間でもそのナレッジとリソースを共有することで、エコシステム全体のクオリティとナレッジレベルを引き上げるという点に関しても議論が交わされた。
アンカンファレンスのワークショップでは、アフリカ大陸全土における連携のあり方についても議論が弾んだ(写真: 筆者撮影)
アフリカ市場は「ラストフロンティア」として海外から注目されている。とくにテック・スタートアップは、アフリカ経済がリープフロッグ型発展を実現するドライバーとしての期待が高い。一方で、アフリカで課題解決に挑む起業家たちを支援するエコシステムはまだ初期段階にあるため、法整備に向けた地道なロビー活動、アフリカ人投資家コミュニティの拡大、そして関係者間における知見共有のしくみ作りといった、時間を要するプロセスが欠かせない。
アフリカン・テックのエコシステムの未来が明るいことは間違いない。だからこそ、資金調達達成やユニコーンの出現といったセンセーショナルなニュースの背後にある、エコシステム形成の動きにも着目し続けることが必要なのだ。
連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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