一方、米国出身の投資家であるクレイグ・ムレット(Craig Mullett)は、会社法が最も確立しているデラウェア州で登記している場合、とくに投資家にとって税制面などでのメリットが大きいと論じた。デラウェア州の統計によると、フォーチュン500の約68%がデラウェア州に登記しているという。
投資家の絶対数や投資額が限られているアフリカの状況に比べて、米国には圧倒的に多くの投資家・資金が存在する。登記場所の選定は戦略次第であるが、海外投資家の視点でみれば、デラウェア州に登記しているスタートアップに投資しやすいというのが実情のようだ。
根本的に、アフリカ人投資家が足りていないという課題もある。現状、アフリカへのベンチャー投資の大半は海外投資家によるものだ。
アフリカン・プライベート・エキュティ・アンド・ベンチャー・キャピタル協会(African Private Equity and Venture Capital Association:AVCA)の2021年の報告書によると、2014年から2020年の間、アフリカのVC取引に参加した投資家の地域別内訳は、39%が北米(37%が米国)、24%が欧州、22%がアフリカ。アフリカの国別の内訳では、9%が南アフリカ、5%がナイジェリア、モーリシャスとエジプトがそれぞれ3%、残り2%がケニアとなっている。
ナイジェリア人投資家 オション・イカゾボ (c) AfricArena
ロンドンとラゴスを拠点にスタートアップ支援活動を展開するナイジェリア人投資家のオション・イカゾボ(Oshone Ikazoboh)は、アフリカのビリオネアたちはスタートアップに投資すべきだと訴えた。
成功したアフリカ人起業家が、投資側に回るという流れはまだ限られている。アフリカにおけるエコシステムの形成と繁栄には、海外からの投資も必要だが、アフリカ人によるアフリカへの投資が欠かせない。一方、経済・通貨・政治社会情勢の不安定は、資金を持ったアフリカ人が自国へ投資することを躊躇する要素となっている現状がある。アフリカ人投資家がリスクテイカーのマインドセットを持つことも必要なようだ。
情報と知見のオープンソース化
アフリカリーナは、アフリカン・テックに関わるベンチャー投資家が集まるオフサイト会議、VCアンカンファレンスでの議論を経て、昨年、エコシステムに関する情報と知見の共有を目的とした団体「デジタル・コレクティブ・アフリカ(Digital Collective Africa)」を立ち上げた。投資家、インキュベーター、アクセラレーター、創業起業家が参加し、一つの組織体としてアーリー期のスタートアップ支援を行う。