6回目となった米フォーブス恒例「フィンテック50」。今回の選考の背景には、新型コロナの影響があった。ロックダウン(都市封鎖)や自宅待機で暇をもてあました世界中の人々が、eコマースサイトを訪れたり、副収入を得るべくオンライン投資に飛びついたり。米株式市場では投資アプリの影響で一部銘柄の株価が乱高下する一方で、不動産市場では低金利と在宅勤務の影響で住宅ローンラッシュが起きている。
現在、フィンテックは“破壊的イノベーション“の最前線である。毎日のようにスタートアップの資金調達額が更新され、合併・買収(M&A)が発表されている。事実、今年の第1四半期、フィンテック関連のスタートアップに記録的な額の資金が流入した。本リストの選考条件は米国内に本社または事業所があり、オンライン発表時の6月8日時点で未上場であることだが、Marqeta(マルケタ)やRobinhood(ロビンフッド)など本誌発売前に新規株式公開(IPO)を迎えた会社も含まれている。逆に選考条件ゆえに、豪州発の後払い決済サービス(BNPL)の「Afterpay(アフターペイ)」や、ブラジル発のネオバンク「Nubank(ヌーバンク)」は含まれていない。
決済や投資を巡る競争は一段と激化し、変革の波が不動産や保険に訪れようとしている。金融業界の「民主化」が進むことで、私たちの生活はいままで以上に便利で、豊かになるはずだ。
B2B LENDING B2B融資
米政府による「PPP(給与保護プログラム)」の申請支援、法人クレジットカード発行、経費管理で注目を集めた領域。Brexのように銀行業に進出する会社も。
Ramp ランプ
法人向けクレジットカードのスタートアップ。拠点はニューヨーク。これまでの調達額は3億2000万ドル(約350億円)で、このうち1億5,000万ドルは2月にゴールドマン・サックスからデットファイナンスで調達した。4月にも1億1500万ドルを調達、評価額は16億ドルとなった。共同創業者兼CEOのエリック・グリマン(31)はハーバード大学出身。ランプのことを「顧客の支出削減を支援する初めての法人向けクレジットカード」と説明する。競合のBrexやDivvyと同じく、手数料無料、無利息でキャッシュバックを提供。特徴は、経費管理プラットフォームを提供している点にある。アルゴリズムを用いて顧客の取引履歴を分析し、経費削減についてアドバイスする。この1年で顧客は平均10万ドルも支出を削減できているという。
ランプは2020年2月12日にサービスをローンチしたが、米国ではその1カ月後、多くの州でロックダウンが実施され、同社の主要ターゲットである小規模事業者の多くが打撃を受けた。現在、約1,000社が同社のサービスを利用しており、話題のソーシャルアプリClubhouseもそのひとつ。取扱高はこの半年で4倍に増え、ローンチから14カ月で累計10億ドルに達した。
調査会社ピッチブックによると、フィンテック企業による調達額は今年4月までに210億ドルに達しており、これは18年に記録した530億ドルに迫るペースだ。
今回調達した資金はプロダクト開発と人件費に充当する予定だ。従業員数はパンデミック中に5倍に増加し、100人。今後、経費管理ソフトに自動節約機能や会計機能を追加するなど、機能を強化する計画だ。
Brex ブレックス
2017年創業。新興企業向けの法人向けクレジットカードを提供する。経費追跡などの機能を有し、財務管理も可能な総合資産管理口座として機能する。共同創業者兼共同CEOエンリケ・ドュブグラス。