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2022.01.03 08:00

化学を気候変動問題の「原因」ではなく「解決策」とするために

Justin Sullivan/Getty Images

Justin Sullivan/Getty Images

環境に配慮した化学物質や化学製品を設計、開発する取り組みが今注目を集めています。世界経済フォーラムのアジェンダからご紹介します。


・化学物質を素材とする製品は、その二酸化炭素排出量を含め、環境に悪影響を及ぼすことが少なくありません。
・グリーンケミストリーとは、製品やプロセスを設計する際に、有害物質の使用を最小限に抑える手法です。
・製造プロセスの効率も高めるグリーンケミストリーは、ビジネスにも有効です。

化学が、私たちの生活に大きなプラスの影響を及ぼしてきたことは間違いありません。洗剤や歯磨き粉をはじめ、医薬品、プラスチック、塗料など、あらゆるものに使われている化学物質は、社会に欠かせない存在です。しかし、有害な化合物を使用すると環境や人々の健康が損なわれるなど、残念ながら意図しなかった深刻な結果を招く場合もあります。

化学は問題をもたらすこともありますが、私たちの敵ではありません。例えば、化学の一つのあり方であるグリーンケミストリーは、有望な解決策なのです。

自然そのものを手本とするグリーンケミストリーとは、化学製品やプロセスを設計するにあたり、有害物質の使用や生成を低減、削減することで、より良い安全な結果をもたらし、不要な副産物を削減するというアプローチです。その対象は、設計、製造段階から、使用、そして耐用年数を終えた後の再利用や廃棄にいたるまで、化学製品のライフサイクル全体に及びます。

グリーンケミストリーは、2021年にボルボ環境賞を受賞した米国の化学者、ポール・アナスタス教授により提唱され、化学物質が環境を改善する画期的な方法として、広く認知されるきっかけとなりました。同教授が提起した「グリーンケミストリーの12箇条」という画期的な科学技術の枠組みは、産業界と学術研究の両方で使用されており、化学品の有害な影響の低減に取り組む化学者の指針となっています。

化学製品の二酸化炭素排出問題


国際エネルギー機関(IEA)は、一次化学物質の製造に伴う二酸化炭素の直接排出量は、2018年に8億8000万トンに達したと指摘しています。気候の不安定化や海洋酸性化など、二酸化炭素排出量の増加が環境に与える影響は周知の事実です。この問題に対処するためには、化学部門がもたらす排出量に真剣に取り組まなければなりません。

化学産業は、石油や天然ガスを大量に消費する業界でもあり、これらを原料として化学製品を製造しています。そのため、エネルギーを大量に消費するだけではなく、潜在的に有害な廃棄物を生成することにもなるのです。グリーンケミストリーは、再生不可能な枯渇性資源を、人体や環境への負荷を低減した再生可能な資源に置き換えることを目指しています。


グリーンケミストリーの12箇条 イメージ: ACS Green Chemistry Institute

その中でも特に注目されているのが、二酸化炭素そのものを建材や化学品、燃料などの製品の原料として利用するというものです。米国ロスアラモス国立研究所の研究者たちは、コンピューターチップ製造に二酸化炭素を使用するプロセスを開発し、製造に必要な化学製品、エネルギー、水の使用量を大幅に削減しました。二酸化炭素を単なる有害な副産物ではなく、有用な資源に転換することは、脱炭素化経済に向かうための重要なステップとなります。
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文=Niklas Gustafsson, Head, Public Policy and Regulatory Affairs, Volvo Group

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