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ビジネス

2022.01.03 17:00

eコマースに相乗り成長する「後払い決済サービス」市場

shutterstock.com

クレジットカードへの信頼を失くした若い世代が向かったのは、「分割後払い決済」だった。提供している会社には、急速に利用者を増やしながら、“ネオバンク“を目指す動きも。


ニック・モルナー(30)は2015年、豪シドニーの実家で宝飾品をオンラインで転売していた。250ドルするセイコー製の腕時計や1万ドルの婚約指輪をオークションサイト「eBay」で一日に数千個も販売し、国内トップセラーとなった。
 
同年、彼は19歳年上で通りの向かいに住む元投資家のアンソニー・アイゼンと後払い決済企業「Afterpay(アフターペイ)」を立ち上げた。靴やシャツなどの少額商品を無利子で6週間かけて4回分割後払いできるオンライン決済サービスである。

「私は世界金融危機の中で育ったミレニアル世代で、クレジットカードからデビットカードへの移行を目の当たりにしました」と、モルナーは語る。彼の世代は、クレジットカードを保有していなかったり、もっていても高金利のため使うことにためらいを感じていたりした。そのため、「今すぐ商品を購入して、後から少しずつ支払う」という新しい決済手段はすぐに消費者に受け入れられた。
 
パンデミックにあって急成長しているのが、アフターペイのようなオンラインPOS(販売時点情報管理)型の分割払い融資事業「Buy Now, Pay Later(後払い決済)」だ。その背景には、オンラインショッピングが浸透したこと、そして不安定な経済状況の中でクレジットカードによる新たな負債を抱えたくない、という消費者心理がある。
 
後払い決済モデルの先駆けとなったのが、05年にスウェーデンで創業され、16年に米国市場に参入した「Klarna(クラーナ)」だ。パンデミックの影響で同社のビジネスも急成長。世界全体で毎日5万5000人の消費者がアプリをダウンロードしている。クラーナは現在19カ国でサービスを提供しており、9000万人のユーザーを抱え、今年は10億ドル以上の収益を見込んでいる。
 
シリコンバレーに本社がある「Affirm(アファーム)」は、ペイパルの共同創業者マックス・レブチンが立ち上げた。同社も19年11月~20年7月に、米国内のユーザー数を560万人にほぼ倍増させている。
 
もちろん課題もある。顧客の増加に伴い、規制当局からの監視の目が厳しくなっているのだ。消費者に対する遅延損害金の請求は「無免許の貸付事業」だと規制当局から指摘され、各社がライセンスを取得している。
 
大企業の参入もありえるため、今後も成長の保証があるわけではないが、拡大の余地を残すBNPLの領域は注目に値する。


「後払い決済(BNPL)」のリーダー企業


Klarna クラーナ



共同創業者兼CEOのセバスチャン・シェミャートコフスキ率いるクラーナはBNPLのみならず、本格的な金融サービス事業に進出。2017年にスウェーデンで銀行として認可され、小売店で販売されるノートパソコンなどに対して、金利をかけて最長24カ月の長期融資を行えるように。“ネオバンク“化も時間の問題か。

Affirm アファーム



ピーター・ティールやイーロン・マスクと、フィンテック企業の先駆け「PayPal(ペイパル)」を創業したマックス・レブチン。新たに立ち上げたアファームは、コロナ禍を追い風に急成長。1月には新規株式公開(IPO)を果たしている。課題は、フィットネスバイク「Peloton(ペロトン)」への売り上げ依存度を下げることか。

Afterpay アフターペイ



アフターペイ創業者のニック・モルナー(写真)は同社株を約7%所有しており、コロナ禍で億万長者になった。16年に上場した同社の株価はパンデミックが始まった当初は暴落したものの、eコマース関連のビジネスが急増したことで、10倍近くに上昇。8月上旬には、米簡易決済企業スクエアが買収する意向を見せている。

文=ジェフ・カウフリン & エリーザ・ハバーストック 編集=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.086 2021年10月号(2021/8/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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