「責任あるエクソンのための連合(Coalition for a Responsible Exxon、略称CURE=キュア)」と名乗る投資家グループは、エクソンが今年「中・下流事業で部門別のCO2削減目標を設けなかった」として反発。別のESG投資家グループ「エンジン・ナンバーワン」が送り込んだアクティビストも名を連ねるエクソンの新取締役会を「Dマイナス」と酷評し、今年の業績が好調なのにもかかわらずダレン・ウッズCEOの更迭を求めている。
CUREが要求を出す数日前、エクソンは自社の石油精製施設などがある英南部サウサンプトンでのCO2排出量削減に向けて、水素の活用とCO2回収を探る覚書をほか2社と締結したと発表していた。
エクソンは米ワイオミング州ラバージの施設などでもCO2の回収・貯留(CCS)事業を積極的に進めている。この施設のCO2回収量はすでに世界最大で、さらに事業を拡大する計画が先日発表されている。
エクソンが仮にCURE側の要求を受け入れれば、来年以降、アクティビストが再びゴールポストを動かし、取締役会に厳しい評価を与えてCEO交替を求めるのは目に見えている。なぜなら、それがESG投資家グループの「仕事」だからだ。
そもそも、エクソンの2025年のCO2削減目標もCUREの圧力によって導入されたものだった。エクソンは今月、全体的な削減目標の実現に向けて、2027年までに150億ドル(約1兆7000億円)を脱炭素に投資する計画も明らかにしている。
じつのところエクソンはすでに世界最大のCO2回収企業なのだが、同社が今後どんなに多くのCO2排出量削減事業を発表しては実行し、年間あるいは10年単位の目標を達成していったとしても、CUREのような活動家グループにとってはけっして十分でないだろう。
これはうんざりするほどわかりきったことだ。とはいえ、石油・天然ガス会社の経営陣が事業計画を立てるうえで何より重視するのが予測可能性でもある。その意味では、CUREがやっていることは意図せずしてエクソンの経営側に配慮したものになっているとも言えるのかもしれない。