ビジネス

2021.12.19

勝ち残る「BtoBサブスク」の要件

チームスピリットCEO 荻島浩司(提供=チームスピリット)

定額課金によって商品やサービスを利用できる「サブスクリプション」。商品をユーザーに売り切る形から転換し、ビジネスモデルとしてサブスクを取り入れる企業は年々増えてきている。

バックオフィス業務を効率化する「TeamSpirit」は、2011年にサービスを開始した。BtoB向けサブスクリプションの走りともいえる企業だ。これまで1531社が導入し、年間解約率は、10%以下で優良SaaSといわれるなかで7.8%(21年8月時点)。

約10年間、勤怠管理や経費精算、工数管理をSaaSで提供してきたチームスピリットの社長である荻島浩司が、BtoBサブスクの成功要件を解説する。


BtoBのサブスクが普及する前、ソフトウェアはプログラムが入ったCDなどで販売されていた。ソフトをインストールすれば永続的に使えるが、アップデートがあれば新バージョンを購入し直す必要があった。

それが変わったのは2000年代の後半。クラウド型サービスで利用期間を定額課金で支払う形態になり、ユーザーは製品を買いに行ったり配送を待つことなく、機能改修や追加が行われた最新バージョンを利用できるようになった。

特に10年以降サブスクは増加しているが、ビジネスモデルに大きな変化はない。ソフトウェアに関して言えば、ここ10年でSaaSが台頭し、新規参入によりIT業界の成長企業の顔ぶれが変わってきたと感じる。

SaaSの生き残り戦略


TeamSpiritのようなBtoB向けシステムの場合、アップデートには2つのケースがある。

1つは、法改定に合わせたもの。経理系であれば税率の変動、労務管理なら労働基準法の改定に伴いシステムを改修していくことになる。

2つ目が、新機能を追加していくケースだ。クラウド型サービスの場合は、小さな機能を小刻みにリリースし、ユーザーからのフィードバックを得て都度改良する形で新機能を追加できる。

不確実なものを仮設をたて改善を繰り返していくやり方は、リーンスタートアップ(短い期間、低コストで作った最低限の製品を、顧客の反応を見ながらアップデートしていく手法)やアジャイル開発(小単位でテストや実装を繰り返し開発する方法)に分類される。

従来主流だったウォーターフォール型の開発(企画→設計→実装→テストの工程を順番に完成させながら製品を開発すること)は、設計書を作ってから開発するため、一度工程を進めると柔軟な変更がしにくくなる。

クラウドが登場する以前は、開発側は相当な準備が必要で、顧客側は再度購入することに慎重になっていた。SaaS型であれば、そのようなことを意識せず追加料金なしで使えるのがメリットである。

上記の1つ目のアップデートは、どの開発会社でも対応する範囲の機能改良だ。

しかし2つ目の既存顧客のニーズを探り、これまでになかった新機能を作り、ユーザーの反応を取り込む施策は、どこでもできる手法ではない。

長くサービスを提供して顧客との信頼関係を築けている会社にしかできない、先行者優位といえる部分だ。
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文=荻島浩司 編集=露原直人

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