メンバーの人間性やチーム力は短期間に評価できるわけではない。したがって投資を検討している企業のデューデリジェンス(適性評価)をした後に、会社が目指す将来像や行動計画についてディスカッションを重ねることが多い。時には、企業のメンバーと一緒に特定の分野の専門家に話を聞き、学びを共有しながら話し合いを続けることもある。
このような投資検討の過程は2〜3年かかることもあるという。最後に決め手となるのは、同社に所属する3人のパートナーそれぞれの「勘」もあるが、「人を見るのが大切という共通認識」は社内で共有しているとミルスタインは話す。
さらに、成長する企業の共通点に「創業者が自分より優秀な人物をメンバーとしてチームに連れてくるのを怖がらないこと」を挙げる。人を大切にして価値観や倫理観を共有するチームをつくることができなければ、スタートアップとして長くビジネスを続けられないだろう、とも続けた。
お金は、ただの道具だと思う
投資先への伴走も徹底している。「投資契約にサインをした瞬間に『投資家』と『起業家』ではなく、同じ船に乗っていると思っている」とミルスタインは言う。「このビジネスをどう大きくしていくか。仕事の99%は投資してからの話だから、お金を振り込んだ後の関係性がよほど大切だ」。
まずは、有望な企業の発掘のために、彼らの主な投資分野であるSaaS、フィンテック、エンタープライズ、メディア、バイオテック、ヘルスケアサービスなどの分野で起業家たちに会い続ける。そしてディスカッションを繰り返し、最良の結論を導きだす。いったん投資が決まると徹底して伴走する。
国内のスタートアップでいま注目しているのは金融分野だとミルスタインは言う。
「日本の銀行は支店の数が多くDXが進んでいない。Paidy(ペイディ)に出資しているのはそれが理由。日本の保険業界にしても保険料が高いし、まだまだ効率化できる分野がいっぱいあるから、フィンテック関連ビジネスには可能性がある」。