年に一度、世界中から一流のアントレプレナーたちが集う祭典──「EY ワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(以下、WEOY)」。より良い社会の構築を目指して、新たな挑戦を続ける世界中のアントレプレナーたちを讃えるこの世界大会に向けて、EY Japanでは2001年より「EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー ジャパン」を毎年開催し、WEOYへ出場する日本代表を決定している。
世界でも約60の国と地域において、ダイナミックなビジネスを創出し、その先見性やリーダーシップ、優れた努力と功績で人々に希望をもたらすアントレプレナーを表彰しているEY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤーは、1986年にアメリカでEYによって創設された国際的なアントレプレナー表彰制度だ。EYがパーパスとして掲げているのは、「Building a better working world 」。EOY 2021 Japanのプログラムもこのパーパスに根差し、次世代を創るアントレプレナーを支援していく取り組みのひとつとなっている。
10名の日本代表候補が最終の舞台に立った
EOY 2021 Japanでは、5月から8月にかけてアントレプレナーの募集を実施した。アントレプレナー精神など6つの基準による選考の結果、マスター・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー部門受賞者1名、エクセプショナル・グロース部門受賞者9名のアントレプレナーが本年度の受賞者として選出され、日本代表候補として最終選考に臨んだ。以下が、その10名である。(敬称略)
【マスター・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー部門受賞者】
海外で企業活動を展開し、グローバルな影響力を有する存在。ビジネスモデルの競争優位性・技術力・マーケティング力が国内外で注目されている、東証一部上場もしくはそれに準ずる企業のアントレプレナー。
・桜井 博志|旭酒造株式会社 会長
【エクセプショナル・グロース部門受賞者】
事業を成功に導き、注目度が高まっている、あるいは注目されている存在。海外で一定の影響力を有し、革新的な技術やビジネスモデルによって事業を展開している。今後さらなる成長が期待されるアントレプレナー。
・猪又 將哲|株式会社ファイバーゲート 代表取締役社長 |北海道地区代表
・鈴木 直記|株式会社 会津工場 代表取締役社長|東北地区代表
・渋谷 修太|フラー株式会社 代表取締役会長|甲信越地区代表
・関藤 竜也|株式会社クラダシ 代表取締役社長CEO|関東地区代表
・慎 泰俊 |五常・アンド・カンパニー株式会社 代表執行役|関東地区代表
・浅井 孝行|アサヒサンクリーン株式会社 代表取締役社長 |東海・北陸地区代表
・田中 邦裕|さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 |関西地区代表
・深川 真 |株式会社マリモホールディングス 代表取締役社長 |中国地区代表
・瀬口 力 |株式会社Lib Work 代表取締役社長 |九州地区代表
このセレモニーの模様はWEBで配信され、上記の10名が自身の事業に対する想いをあらためて熱く語り、EOY 2021 Japanの最終舞台に立った喜びと謝辞を述べた。
ある者は今後のさらなる飛躍を誓い、またある者はともに奮闘してきた仲間に尊敬と感謝の意を伝えた。この日、彼らのなかにあるアントレプレナーとしての熱源は、魂のこもった言葉となって発露し、晴れやかなる表情を生み出していた。
白熱した選考会、重視したポイントは
選りすぐりの10名からたった1名となる日本代表は、選考委員による2日間にわたる候補者インタビューの後に最終決定がなされていた。選考委員長である経営共創基盤(IGPI)IGPIグループ会長の冨山和彦をはじめとする8名の選考委員が集まり、熱気がみなぎる選考会となった。
選考委員長を務めた経営共創基盤(IGPI)IGPIグループ会長 冨山和彦。
選考の際に特に重視されたのは、以下のポイントだ。
1. アントレプレナー精神
2. 企業価値の増大
3. 経営戦略の方向性
4. 成長可能性と影響力
5. イノベーション
6. 社会貢献
日本代表が決定、そして来年の世界大会へ挑む
EOY 2021 Japan日本代表は、来年6月にモナコで開催が予定されている世界大会、WEOYの出場権利を得る。その名前が発表される前には、前回EOY 2020 Japanで日本代表となったオイシックス・ラ・大地 代表取締役社長の髙島宏平が壇上に立ち、この場にいるアントレプレナー全員に語りかけた。
「今日、ひとりの日本代表が決まりますが、ここに勝者と敗者がいるわけではありません。皆さんが勝者であると思っています。僕たちの闘いは、会社を大きくして社会を変革することにあります。これからも一緒に社会を変革する同志として楽しく前に進んでいきましょう」(髙島 宏平|オイシックス・ラ・大地 代表取締役社長/前回EOY 2020 Japan日本代表)
────そして世界ナンバーワンのアントレプレナーを決する大会への切符を手にしたのは、旭酒造の桜井博志だ。彼の功績には、属人的な“経験と勘”から徹底した“数値管理”への移行を遂げ、日本の伝統産業である酒造りに革命を起こしたことが挙げられる。
●日本代表
桜井 博志|旭酒造株式会社 会長(インタビュー記事はこちら)
EOY 2021 Japanでマスター・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー部門を受賞し、日本代表に選出された旭酒造 会長 桜井博志。
「人間はただ生きる、生き残るだけでは我慢できない。やはり、喜びが必要です。だからこそ、この世には音楽があり、スポーツがあり、文学があり、芸術がある。そして、おいしい食があって、お酒がある。そうした人間になくてはならないもののなかでも、私は日本で生まれたお酒を世界にお届けしています。そのような私たちの事業にとって、何が必要とされているのか……。今回のアワードにより、あらためて事業の本質を見つめ直すことができました。このような機会をいただけたことに感謝しますとともに、さらにおいしい『獺祭』をつくっていきたいと決意するところです。皆さま、ありがとうございました」(桜井 博志|旭酒造株式会社 会長)
いま、旭酒造が手がける純米大吟醸「獺祭」は、世界で愛飲されている。来年のWEOYでは、モナコの会場を酔わせるに違いない。
前年度日本代表のオイシックス・ラ・大地 代表取締役社長 髙島宏平より新たな代表となる桜井へ日本代表としてのプライドとともに国旗が引き継がれた。
また、選考委員特別賞として名前が読み上げられたのは、五常アンド・カンパニーの慎泰俊。すべての人が金融サービスを使える世界を実現するために、慎は「民間セクターの世界銀行をつくる」をミッションに掲げ、2014年に五常・アンド・カンパニーを創業。途上国の低所得層や中小零細企業の未来を変革するべく、金融包摂という課題に取り組んでいる。
●選考委員特別賞
慎 泰俊|五常・アンド・カンパニー株式会社 代表執行役(インタビュー記事はこちら)
EOY 2021 Japanでエクセプショナル・グロース部門を受賞し、選考委員特別賞に選出された五常・アンド・カンパニー 代表執行役 慎 泰俊。
「発展途上国には40億人が暮らし、このうち40%は金融サービスの口座をもっていないというのが現状です。いま、創業から7年が経って、私たちは5カ国・100万世帯に金融サービスを届けています。その9割以上の方々が働くお母さんたちです。2030年までに50カ国・1億人にサービスを届けることを創業以来の目標として掲げていますので、これからも全力を尽くしてまいります」(慎 泰俊|五常・アンド・カンパニー株式会社 代表執行役)
トロフィーを授与された慎は、「高い目標を掲げているだけに、これからも挫折はあるだろう」と語った。そして、「しかしながら、思い悩む過程において、また新たな道や思想が生まれてくるはずだ」と言葉をつなげた。
新設された一般投票企画「People’s Choice」
読者に最も支持されたのは
EOY 2021 Japanは、Forbes JAPANによる特設WEBサイトとの連動で日本代表候補10名のインタビュー記事を掲載し、それぞれの事業に対する熱源、事業がブレイクスルーしていく道程に迫ってきた。本年は新たな試みとして、これらの記事の読者から投票を募り、「People’s Choice」と題した一般投票企画も実施した。
「Passion(情熱)× Uniqueness(独自性)= Breakthrough(障壁の突破)」と定義した2部門の名称および概要、そして受賞者の歓喜のコメントも紹介したい。
【GREAT PASSION部門受賞者】
インタビュー記事を読み、もっとも「熱量」がすごいと感じたアントレプレナーに読者が投票。
渋谷 修太|フラー株式会社 代表取締役会長(インタビュー記事はこちら)
People’s Choice Entrepreneur with GREAT PASSION賞を受賞したフラー 代表取締役会長 渋谷修太。
「一般投票ということで世の中の皆さまからの応援をいただけたことが、何よりも嬉しいです。私は昨年から故郷の新潟に拠点を移して活動していますが、それはシンプルに『故郷を、日本を元気にしたい』という想いから始まっています。今回は、こうした熱意を評価していただき、勇気をもって行動したことが報われた気がしました」(渋谷 修太|フラー株式会社 代表取締役会長)
【UNIQUE BUSINESS部門受賞者】
インタビュー記事を読み、他の誰にも真似できないような「独自のビジネス」を展開中と感じたアントレプレナーに読者が投票。
猪又 將哲|株式会社ファイバーゲート 代表取締役社長(インタビュー記事はこちら)
People’s Choice Entrepreneur with UNIQUE BUSINESS賞を受賞したファイバーゲート 代表取締役社長 猪又將哲。
「UNIQUE BUSINESS賞をいただき、大変光栄に思っております。投票いただいた読者の皆さまに心より御礼申し上げます。なぜ、私のことを『Unique』と感じていただけたのか自分自身ではよくわかっていないのですが、今後も『ニッチな市場を自ら創出し、トップシェアをとる』ことに専心してまいります。今後ともご指導を賜りますようお願い申し上げます」(猪又 將哲|株式会社ファイバーゲート 代表取締役社長)
本年もForbes JAPANは社会を変えようとする熱き日本のアントレプレナーたちを取材し、その熱き想いを記事にしてきた。世界には数多の人が彼らのプロダクトやサービスを必要としている。ならば、やらねばならない。たとえ困難があろうとも、挑戦し続ける理由は十分にある。Forbes JAPANは、EOYの受賞者への取材などを通じて、世界に挑むアントレプレナーにこれからも注目していきたい。
▶︎EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー 2021 ジャパン アワードセレモニー
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