経済・社会

2021.12.19 07:30

チャーター校に860億円寄付 ブルームバーグの教育改革が生む疑念

マイケル・ブルームバーグ(Chesnot/Getty Images)

米富豪のマイケル・ブルームバーグは公立学校での教育に否定的で、公立学校の教育制度は「衰退」し、「壊れている」と主張してきた。そんな彼がこのたび、「効果が証明されてきた代替策」として、20都市圏のチャータースクールに今後5年間で7億5000万ドル(約860億円)を寄付する意向を表明した。

チャータースクールとは、地元当局の認可(チャーター)を受けて保護者や教師、地域団体などが設立した学校のこと。ブルームバーグは、米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄港記事でその理由を説明した。

彼はまず、米国の学校では新型コロナウイルスの流行前でさえ、児童・生徒の3分の2が学年相応の読解ができなかったというデータがあると指摘した。ただ、これはよく引用される数字であるものの、間違っている。

この主張は、2019年の全米学力調査(NAEP)結果に基づくものだ。同調査では、読解力スコアが「優良」に達していない児童・生徒は約3分の2に上る結果となった。ただし、「NAEPでの優良の達成水準は、他の評価基準で定められた学年相当の優良さとは異なる」と説明されている。

つまり、NAEPの優良レベルに達しなかったことは、学年相応の学力がないことを意味するわけではない。2019年の調査結果は、児童・生徒の3分の2が学年相応の読解力を持っていないことを示しているわけではないのだ。

ブルームバーグは、米国の公立校では無意味な卒業証書を得られるだけだが、「他国はこの課題に立ち向かい、先を行っている」と主張したが、どの国がどのように米国の先を行っているのかには言及していない。

また、ロサンゼルスの教員組合長が「学びの損失などは存在しない」と発言したことを批判。欠陥のある教育制度により「最も弱い立場にいる人々が貧困の生活を送る運命になる」と主張した。まるで、教育以外の要因はないとでも言うようだ。

ブルームバーグは、ニューヨークのチャータースクール、サクセス・アカデミーを成功例として挙げたが、同校を模範として扱うのには問題がある。サクセス・アカデミーの児童・生徒の成績が優秀なのは確かだが、その秘密の一つは、入学者を厳しく選別していることにある。
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編集=遠藤宗生

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