ビジネス

2021.12.26

欧州の「スーパーアプリ」に変貌するエストニア発Boltの快進撃

BoltのCEOマーカス・ビリッグ(Getty Images)

配車サービスとマイクロモビリティ事業を手がけるエストニア企業の「Bolt(ボルト)」は今年、欧州で急成長中の「15分以内の食料品デリバリー」に参入したが、2022年1月までにBolt Marketと呼ばれるそのサービスをスウェーデン、ポーランド、チェコ共和国に拡大する計画だ。

現在27歳のマーカス・ビリッグ(Markus Villig)が率いるボルトは、8月に投資家から6億ドルを調達し、タクシーやeスクーター、短期レンタカー、フードデリバリー、そして今回のファストコマースを含む「スーパーアプリ」として事業を再構築した。エストニアの首都タリンを拠点とする同社は、すでに欧州の7カ国で食料品のデリバリーを行っているが、2022年には東欧やスカンジナビアにも進出する予定だ。

ボルトは、チェコ共和国のRohlikや、トルコのGetir、ベルリンのGorillas、11月にドアダッシュに81億ドルで買収されたフィンランドのWoltなどの欧州のライバルとの競争に直面しているが、配車サービスやeスクーターのインフラを活用して、競合よりも早く、より効率的にフードデリバリー事業を構築しようとしている。

ボルトはまた、タリンで始動したレンタカーサービスのBolt Driveのテスト版を、2022年中に欧州の7カ国に拡大する計画だ。Bolt Driveは、ユーザーがアプリを使って車のロックを解除し、1分単位で車を借りられるサービスだ。

ただし、ビリッグ自身は運転免許証を持っていないため、自身で利用したことはないという。フォーブスの「30アンダー30」の卒業生である彼は、ボルトを様々なモビリティサービスを組み合わせた「スーパーアプリ」に成長させ、ウーバーに対抗する存在にしたいと考えている。ボルトは米国に進出する予定はないが、現在45カ国で活動しており、アフリカでも急成長を遂げている。一方で、ウーバーは70カ国以上に進出している。

自家用車の利用をやめさせる


ビリッグは長期的には、ボルトのサービスを通じて人々に自家用車の利用をやめさせたいと考えている。彼の野望は、TierやVoi、サンタモニカを拠点とするBirdなど、欧州で群雄割拠するeスクーター(電動キックボード)のレンタル企業を脅かす可能性がある。2018年に始動したボルトのeスクーターのBolt Scooterは、現在100以上の都市に進出しており、配車サービスと組み合わせて使われている。

2013年に当時19歳だったビリッグが設立したボルトは当初、ベンチャーキャピタルからの資金調達に苦戦していたが、eスクーターやフードデリバリーの市場は近年、数百億ドル規模の資金を集めている。

「他のプレイヤーを見てみると、彼らはeスクーター事業のみで、当社がこれまで調達した金額よりも多くの資金を調達している。しかし、当社のeスクーター事業の方が彼らよりも大きいのだ。ボルトはより多くの都市で、より多くの車両を配備しており、今後はさらに乗車回数を伸ばしていく予定だ」とビリッグは話した。

編集=上田裕資

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