私の考える投資思考とは、あらゆることの言語化です。まず、投資家にとって必要な能力は、10年単位で技術の流れを読み解き、20年、30年後の未来を想像すること。その次に必要なのが、その未来像を平易な言葉で言語化することで出資者を説得し、その技術に張っておくことです。
私は、2013年からシリコンバレーで投資やベンチャー支援に携わってきましたが、いまでも思い出す悔しい出来事があります。ブロックチェーンの話を初めて聞いたのは、シリコンバレーで投資を始めて間もないころ。当時は、この技術の普及までに時間がかかると見た人と、買いに出た人がいました。ここが投資家たちの明暗の分かれ目です。私もブロックチェーンの可能性にピンときたひとりでしたが、それを出資者にきちんと説明し説得する能力がなく、チャンスを逃しました。
未来をつくるシリコンバレーの流儀
シリコンバレーには、技術を読み、投資を成功させる人たちがいます。
起業家で言えば、スナップチャットの創業者、エヴァン・シュピーゲルがいい例です。スナップチャットはメッセージアプリとして、アメリカを中心に多くのユーザーを獲得してきました。しかし、シュピーゲルは、会社を上場させるタイミングで、自らを「カメラの会社」だと説明した。それは、10年単位で技術の発展を予見したからです。同社がいま注目を集めているのは、写真やビデオを使ったコミュニケーションをベースとした、AR事業です。当初はその意味があまり理解されず、株価を下げた時期もありましたが、わが道を進み、AR業界で地位を築きました。会社の行くべき先を見すえて、それを早い段階から言語化して発信していたのです。
投資家で挙げたい人物は、アークインベストメントCEOのキャシー・ウッドです。特に優れているのは、やはり説明力。一例として、彼女は技術と生産コストの関係性を示す「ライトの法則」に基づいて、事業利益を予測します。技術は大量生産が可能になり、コストが落ちるタイミングがある。例えば、電気自動車なら、リチウムイオン電池の性能やコストの変動に合わせて、いつどのくらいの値段で量産できるのか、ある程度の精度で予測できます。シナリオを元にテクノロジーの方向性を示す。これがお金を集めてくるプロ、投資家として彼女のもつ武器、よき説明力です。