平均調達額を大幅に上回ったのはノミ・ヘルスだけではない。2021年に入ってから1億ドル以上を調達した企業は他に62社もある。とはいえ、ノミ・ヘルスが注目に値するのは、調達額の規模が、シリーズAというよりシリーズCに近い点だ。
通常、シリーズAよりも後のシリーズCでは、創業年のもっと古い企業が資金調達を行い、その金額は平均で1億1400万ドルに上る。一方、シリーズAラウンドの場合は、2021年に入ってからこれまでの平均調達額が1800万ドルだ。
「ベンチャー業界全体の傾向として、シリーズAラウンドの規模と評価額が大きくなっている。しかし、ノミ・ヘルスはシリーズAラウンドで資金調達を行った企業としては、きわめて異例で突出している」とガジーは話す。「彼らの遂行力と規模拡大は稀なものだ。米国のヘルスケアを改革しようという機運が高まるなかで、良いインパクトを与えている」
ノミ・ヘルスは2021年9月にも話題になった。非営利団体RIP Medical Debtと提携して、200万ドルを寄付し、米国人17万6000人が滞納していた医療費2億2500万ドル相当を帳消しにしたのだ。
一方、ノミ・ヘルスは2020年、入札によらずにテネシー州と新型コロナウイルス検査事業の受注契約を結んだことについて、厳しい目を向けられた。
「州政府の公共調達については、コメントすることはない。ましてや、全米でニュースになったような、テネシー州の公衆衛生局と州政府幹部が反目し合ってぎくしゃくしている状態に関しては、コメントするつもりはない」とニューマンは述べた。
ニューマンによれば、ノミ・ヘルスがテネシー州との契約条件をすべて満たしていたことは確認されているという。同氏は、ノミ・ヘルスが農村部や公営住宅、刑務所といった「医療砂漠」でサービスを提供していることについて胸を張る。パンデミック中となればなおさらだ。
「新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まった当初は、従来の医療システムでの対応が困難になったときに、州や郡が最終手段としてノミ・ヘルスに声をかけてくることが多かった」とニューマンは振り返る。「けれども今では、私たちの実績とインパクトが評価され、最初に声をかけられることが多い」