ノミ・ヘルス(Nomi Health)は、第三者の医療保険会社をあいだに挟まないかたちで、米国の多くの人に医療サービスを提供しているスタートアップだ。同社は2021年12月8日、シリーズAラウンドで1億1000万ドルの資金を調達したと発表した。
ノミ・ヘルスを創業したマーク・ニューマン(Mark Newman)最高経営責任者(CEO)は、「今回のシリーズAラウンドは、3兆ドル規模の医療市場でノミ・ヘルスが果敢に挑もうとしている挑戦がいかに大きいかを物語っている」と語る。「ノミ・ヘルスの持つインパクトが浮き彫りにしているのは、米国の医療システムが機能不全に陥っており、それを構築した側が修復できずにいることだ」
ノミ・ヘルスは2019年に創業された。現在は10州で運営しており、同社の医療サービスを利用する人は1日あたり3万人に上る。地方自治体、大学、企業と契約して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査やワクチン接種、治療のほか、その他の予防的な健康診断といった基本サービスを提供している。また、刑務所や学校、公営住宅、長期介護施設、農場、工場にも、遠隔医療チームを派遣している。
ニューマンによれば、今回調達した資金は、同社が運営するサービス拠点と利用者増加への対応に充てられる。また、医療サービスを直接購入できる同社事業の拡大や、臨床スタッフと技術スタッフの増員も行う予定だ。
今回の資金調達ラウンドは、ハーバード・ビジネス・スクールの元教授クレイトン・クリステンセンが創業したベンチャーキャピタル「ローズパーク・アドバイザーズ(Rose Park Advisors)」と、フィンテック支援を専門とする世界的ベンチャーキャピタルArbor Venturesが共同主導した。
Arbor Venturesの共同創業者でマネージングパートナーのメリッサ・ガジー(Melissa Guzy)はこう述べる。「私たちがノミ・ヘルスに投資したのは、同社が米国医療システムの抱える最大の問題のひとつを解決するからだ。既存の大手医療会社は、業務面でも技術面でも非常に効率が悪く、その経費の占める割合は、医療費1ドルにつき30%から50%にもなっている」
ノミ・ヘルスによる今回の資金調達は、デジタルヘルスケア投資で見られる、より大きなトレンドを反映している。この分野ではこのところ、早い段階でより多くの資金をベンチャーキャピタルから調達する企業が増えているのだ。
ヘルスケアのアクセラレータ「ロック・ヘルス(Rock Health)」によると、デジタルヘルス分野のスタートアップが2021年の第1四半期から第3四半期までに調達した資金は213億ドルで、2020年の通年合計146億ドルを上回っている。2021年1月から9月までのあいだの調達件数は541件で、平均投資額は3940万ドルと、2020年の平均額3150万ドルを超えた。