「4つの日課」。英国から帰国した強制隔離者「出所」までの手記

スマートフォンに入国時に入れたアプリ、「my SOS」からランダムに発信される「現在地報告」


その他、タオル、トイレットペーパー、ペットボトルの水、部屋に備え付けのフィルターのコーヒーなどはフロントに電話すると補充してもらえた。この他、余分のスプーンやフォーク、皿をお願いしたのだが、使い捨ての紙皿を提供していただいた。

ただ、隔離対象者の数が増えているからか、何をリクエストしても実際に持ってきていただけるまでに4、5時間はかかった。トイレットペーパーが切れそうだったのでお願いした日は特にリクエストがたくさんきていたのか、実際に持ってきていただけたのは約12時間後の翌日だった。

また、爪が伸びてきたので爪切りをお願いしたが、爪切りの貸し出し自体は行っているものの、出払っているとのことだったために断念した。

洗濯に関しては、朝7時から時間帯を予約することでその日の午後5時までにホテル内にある洗濯乾燥機を有料で使えるサービスがあったが、数日にわたって午前7時過ぎに電話したもののつながらず、少したってから掛け直しても当日の枠は「既にいっぱい」という回答だった(当日分を当日の朝に予約受付)ために、あきらめた。必要な分は洗面所で手洗いしたが、洗濯用洗剤を持ってきていなかったので、備え付けのボディソープで代用した。

「出前館」や友人からの差し入れはOK


隔離中、飲酒と喫煙は禁止となっている。ただ、ウーバーイーツや出前館などの食事のデリバリーや家族や友人からの直接の差し入れや宅急便での差し入れは可能なので、食べたいものをお願いしたり自分で頼んだりして、数回部屋まで届けていただいた。

暖かい食事をデリバリーで2回頼んだが、1回はすぐに部屋まで届いたものの、2回目は受付には比較的すぐに到着したが部屋に届けてもらうまでに2時間ほどかかり、食事は残念ながら既に冷めていた。また、宅配便で届いた差し入れは、係りの方が部屋まで持参してくださった。筆者の目の前でカッターナイフで箱が開けられ、中にアルコールや不審物などがないかどうかをチェック後に手渡された。食事のデリバリーの中にアルコールが入っていないかどうかも同様に確認されているようだ。

筆者は友人から、アイルランドに入国した際に「隔離の必要がある場合は1日に15分程度係員同行のもとで散歩が許される、など運動不足を解消する時間が設けられていた」と聞いたが、日本の場合は外出は許可されていなかった。スマートフォンの万歩計機能に運動不足が如実に現れており、隔離の前の週は毎日5000〜1万歩歩いていたのだが、隔離中は数十歩以下の記録となった。


(写真5 隔離中の歩数計は、数十歩以下の記録)

筆者は、スクワットをしたり、床にバスタオルを敷いてヨガをしたり、狭い部屋をぐるぐる歩き回ったりと、運動不足を少しでも解消しようと心がけていた。

また、検疫所に入所した当日は、飛行機着陸から入所まで7時間と、長い時間のフライトの後に手続きに非常に時間がかかったこと、予想外の隔離に部屋で時間を過ごすことを非常にストレスに感じたのだが、2、3日経つうちに、小さな部屋で過ごすことや、電子レンジがないために温められないお弁当を1日3食食べることにも徐々に慣れてきた。

雲のない日は富士山が窓から見えることに滞在の後半に気づいたことも、変化のない7日間のささやかな彩りとなった。


(写真6 隔離中の部屋から遠くに望む富士山)
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文=高以良 潤子 編集=石井節子

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