「4つの日課」。英国から帰国した強制隔離者「出所」までの手記

スマートフォンに入国時に入れたアプリ、「my SOS」からランダムに発信される「現在地報告」


「午前8時ごろ、体温をWebから入力」も日課


隔離中、3日に1回のPCR検査の他に毎日やらなければならなかったことは3つある。1.体温を測って、スマートフォンから、専用のWebサイトにその日の体温と体調を入力すること(午前8時ごろと決まっていて、忘れた日にはフロントから電話がかかってきた)。2.スマートフォンに入国時に入れたmy SOSというアプリからランダムに発信される「現在地報告」に対応すること。これは、アプリが位置情報をトラックしているため、ポップアップに応じてアプリの画面をタップするだけだ。ただ、スマートフォンは常に手もとに置いて、即対応しなければならない。もう一つは、3.同じくmy SOSのアプリにかかってくるビデオ通話に応答すること。これは、アプリから無人でかかってくる電話で、応答すると30秒間、顔と背景が録画され、位置情報を取得されるものだ。

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(写真3 my SOS)

ビジネス環境はなし、「本を積んだ上にPC」でしのぐ


私は隔離中に発熱などもなく、検査の結果も入国時(0日目)、待機3日目、6日目(出所日)とも陰性だったため、上記の3つの行動以外に特別な対応を求められることはなかった。

そのため、これ以外の時間は、部屋から出ないこと以外は特に制限されることなく、自宅で在宅勤務をするときと同様、ホテルの部屋から自分の会社のパソコンを使って普段通り仕事をした。

オフィスでの勤務や自宅での在宅勤務のときと勝手が違ったのは、滞在した部屋がビジネス用の部屋ではなかったため、仕事に適した机と椅子がなかったことだ。軽い食事をする用の小さい丸い机と背もたれがない椅子で1日8時間以上パソコンに向かうとすぐに腰が痛くなった。

受付に違う椅子や机を提供してもらえないか頼んでみたが用意がないとの返答だったので、電気ポットや冷蔵庫が置かれている部屋の一角の棚に手持ちの本を何冊か積み、その上にパソコンを置いて立ったまま仕事をした。

また、隔離施設のWiFiのつながりが悪かったため、フロントに連絡して、ホテルで数種類あるというWiFiのうち比較的つながりやすいものを案内してもらった。これは待機施設によって状況が異なると思われるため、隔離中に仕事をする場合は、もともと使っているポケットWiFiなどがあるならそちらを活用するか、訪日者向けの短期間のみ契約できるWiFiを新たに契約して即配送してもらうことも選択肢の一つだと感じた。

待機中の生活スケジュール
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また、建物自体はホテルだがいわゆる「ホテル滞在」ではなく隔離・待機であるため、もちろん掃除やシーツの交換、ランドリーサービスなどは提供されない。ゴミは自分で分別し、まとめて部屋の外に出しておくと回収してもらえる。ビニール袋にまとめられたゴミが各部屋から通路に出されて並んでいる光景は、シュールな印象だった。


(写真4 ホテルの通路にゴミ袋が点々と並ぶ)
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文=高以良 潤子 編集=石井節子

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