ARは、現状ではスマートフォンのカメラの映像に、デジタルの世界の情報を重ねて表示するクールなシステムとして知られている。このテクノロジーは、ゲームアプリの「ポケモンGo」などで広く知られるようになったが、今後はヘッドセットへの搭載が期待されている。
アップルのティム・クックCEOは、4年前の筆者の取材に、ARのメリットについて、VR(仮想現実)のように身の回りの世界を遮断してしまうのではなく、現実空間に新たな情報を追加できる点が魅力的だと話していた。また、別の機会に彼は、ARが人々の日常生活に役立つ可能性を秘めたコアテクノロジーだが、メインストリームになるまでには、まだ発見すべきことがあると述べていた。
著名アナリストのミンチー・クオは、11月のレポートでアップルが来年にもARヘッドセットをリリースすると予測した。しかし、筆者は、アップルが2022年のWWDCでは、このプロダクトをお披露目するだけで、発売は2023年になると考えている。
アップルは慣例として、新たなカテゴリに進出する際にプロダクトの発売に先立ち、その情報を開示しており(アップルウォッチの場合は、2014年9月に発表され、発売は翌年の3月だった)、これにより、開発者たちに新たなプラットフォームに対応するための時間を与えている。クオは、2022年の年末の発売を予想したが、筆者はその可能性は低いと考えている。
Macと同等の処理能力
アップルのARヘッドセットにはMacと同程度の処理能力を持つプロセッサが搭載され、それが競合のプロダクトとの差別化要因になると、クオは述べている。また、初代のアップルウォッチのように、iPhoneとペアリングして使用することを前提としたものではなく、スタンドアローンで使用するデバイスになると、クオは予測した。
クオはさらに、アップルの目標が10年以内にこのヘッドセットをiPhoneを置き換える存在にすることだと述べたが、これについて筆者は懐疑的だ。アップルは、ある製品を別の製品に置き換えようとしたことはなく、むしろ、製品がお互いを補完し合うことを目指してきた。さらに言うと、常にヘッドセットを装着するような未来は、たとえそれが2032年のことであっても、想像し難い。
クオはさらに、アップルのARヘッドセットに2つのソニー製の4Kマイクロ有機ELディスプレイが搭載され、ARだけでなくVR(仮想現実)にも対応する可能性があると述べている。
また、同社のARヘッドセットは、少なくとも6〜8個の光学モジュールを用いてAR映像を実現するもので、iPhoneよりも大幅に高い処理能力を持つプロセッサが必要になるとクオは述べている。それに対し、iPhoneの場合は、最大3つの光学モジュールを用いている。