日本一のタワーに大規模店舗を開業
プロジェクトは、第一期・第二期と段階を分けて設計。第一期では、公募した18人の学生たちが、「TOKYO TORCH」1階に約40坪の路面店を開業する。日本全国を関東・近畿など6ブロックに分けて、それぞれ3人の学生が担当し、2カ月ごとに特集地域を切り替えて運営する。
2027年には、「TOKYO TORCH」の隣に日本一の高さとなる「Torch Tower」が開業予定で、その中に新たに約400坪の店舗を構える予定だ。これが第二期の幕開けとなる。第一店舗の約10倍となるこの店舗には、47都道府県すべての常設ブースを設置。各都道府県出身の学生たちが勢揃いし、店舗運営を行う仕組みとする。
Torch Tower(左)開業後のイメージ
「この時点で、アナザー・ジャパンのOBOGが100人を越えているはずなので、縦のつながりを生かした発展的な取り組みにも期待しています」(谷沢)
学生経営のメリットは?
本プロジェクトの肝になるのが、中川政七商店が培ってきた“経営”の教育ノウハウだ。同社は2008年に中川政七(現会長)が社長に就任して以降、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、各地で約60社の経営再生のコンサルティングを手がけてきた。
2020年には、コンサルの対象をいち企業でなく、街全体に拡大。街の魅力を向上させるには「そこにしかないもの」をつくる必要があると考え、スモールビジネスに着目し、奈良県のスモールビジネスを対象とした支援プロジェクト「N.PARK PROJECT」をスタートした。
アナザー・ジャパンの記者発表会には、このN.PARK PROJECTの支援を受けて、奈良県内でラーメン店「すするか、すすらんか。」を起業した近畿大学農学部の西奈槻さんが出席。学生が経営に携わるメリットについて以下のように話した。
「はじめは“ノリ”もあって起業への一歩を踏み出しましたが、現在はラーメン店を2店舗経営できるほど成長し、振り返ると『経営を通して人生が変わったな』と思います。経営を通して『自分がどう生きたいのか』を考えるようになったので、とても良い経験になっています」
一方で、学生による経営は「学業との両立が難しい」という課題もある。アナザー・ジャパンでは、参加学生の活動が大学での評価にもつながるよう、大学側にもアプローチしていきたいという。
第1期生となる18人の募集は12月9日からスタートしている。毎年新しい世代を採用する予定だという。また、学生の活動を応援・支援する企業などの「サポーター」も募集する予定だ。
TOKYO TORCH事業部長を務める三菱地所 執行役員の茅野静仁は「このプロジェクトを通して、若い人たちとつながりながら日本の将来をつくっていきたい」と期待を込めた。