その理由は、プライバシーだ。アップルは、iOS14.5から「アプリのトラッキングの透明性」(ATT)のプロンプトの導入を義務付けたが、それに従わないアプリが削除されたのだ。
「アップストアは毎月1〜2%のペースで成長しているが、ATTがリリースされてから約1カ月後の6月に、約42万個のアプリが消された」とAppfiguresのCEOのアリエル・ミケリは12月3日のブログで指摘した。
ATTは、アプリのパブリッシャーがマーケティング結果を測定したり、人々のモバイル行動を追跡したりする場合に、ユーザーにトラッキングの許可を求めることを義務付けるものだ。アップルは、iOS 14.5からアプリ開発者にこのポリシーに対応することを要求したが、一部の開発者はこれに従わなかった。
「何十万人もの開発者が、ATTを真剣に受け止めていなかった、もしくは、自分たちのアプリやゲームをわざわざアップデートするほど気にかけていなかった」とミケリは指摘した。
今回の結果は、アップルがアプリのポリシー要件をどれほど重視しているかを表すものだが、それと同時に、アプリ開発の厳しい現実を示すものでもある。ほとんどのアプリは全く注目されず、ダウンロードもされない。アプリを開発した企業は、採算が合わないアプリを放置しているのが現実だ。
また、アマチュアの開発者が、ノーコードのアプリ作成サービスを使って作った低品質のアプリも多い。これらのアプリは、多くの自費出版本のように、個人の自己満足のためにストアに掲載されている。
言い換えれば、多くのユーザーに利用されている本当に価値のあるアプリは、ほとんど削除されていないのだ。また、アップルは、アプリの森の地面に落ちた枯れ葉を実質的に淘汰したとも言える。
ATTが及ぼす影響として語られるのは、これまでマーケティングや広告業界に関連した話題がほとんどだったが、それ以外にも影響が出ているのは明らかだ。
「この状況は、アクティブな開発者にとっては朗報だ。なぜなら、彼らにとっては競争相手が少なくなったのだから」とミケリは述べている。