米有力シンクタンクのブルッキングス研究所が米国勢調査局のデータを分析したところによると、米国人の間で1年間に住居を変えた人は10%に満たないことが2019年までに明らかになった。これは記録が始まってから最低値だ。
状況はここ1年で大きく変化した。新型コロナウイルス感染症による初期のロックダウン(都市封鎖)から2021年の夏にかけ、移住と遠隔勤務は密接に関連していた。一時的な住所変更依頼は、2020年の最初の半年で27%近く増えた。
それから今度は年末に向け、恒久的な住所変更依頼がより多く出されるようになった。2020年に記録された米国人の国をまたいだ恒久的な移住は、2019年と比べて7%増えていた。このトレンドは秋に加速し、増加幅は前年と比べて10%以上で、12月には28%になってピークを迎えた。
こうした人はどこに移住しているのか? 引っ越しを考えている場合、どのような選択肢があるだろう? ここでは、いくつかのトレンドと転居のコツを紹介する。
都市からの人口流出が本格化
米国では長年、大半の都市で人口が減ってきた。住民の数は移民のおかげで安定していたものの、2020年には多くの都市が住民数の実質的な低下を経験し、米ニューヨークのマンハッタンでは流出数3人につき流入数はわずか1人だった。2019年は流出数2人につき流入数は1人だった。
ニューヨーク市だけでも10万人を超える住民が流出したと試算されている。ロサンゼルスでは、2020年の住民数減少が最終的には前年から58%増え、かつての人気都市であるシアトルやポートランドも人口が減少した。
都市の生活費の高さを考えると、こうした変化も納得がいく。ニューヨークの2寝室アパートの賃料中央値は2019年、3500ドル(約40万円)だった。これは米国全土の中央値1480ドル(約17万円)のおよそ倍だ。
ロサンゼルスやサンフランシスコなどの都市も生活費の高さで有名だ。オレゴン州ポートランドはかつて比較的生活費が手頃な場所だったが、米コメディー番組「ポートランディア」が人気になった頃から状況は変化した。ポートランドはもはや「若い人が引退目的で移住する」場所ではないと言えるだろう。
住んでいる街がまるで24時間営業のテーマパークのように感じられていたときには、生活費が高くてもその価値があるように感じられただろう。しかし全てのものが閉鎖されると、遠隔勤務を始めたばかりの人はまるで独房で監禁生活を送っているように感じた。
これこそ、移住が最も多かったのがミレニアル世代とジェネレーションZ世代である理由の一つだ。25歳未満の3分の1以上が、新型コロナウイルス感染症の流行中に転居している。