さまざまな社会課題を解決する可能性
国連貿易開発会議の発表によるとファッション業界は世界で第2位の汚染産業とされ、⽇本だけでも⾐料の廃棄物は年間約140万トンにも上る。アパレル業界では、正確なボディサイズ情報はESG経営上欠かせないものといえるだろう。
宮城県・仙台育英高校の制服製造を請け負うマルホン株式会社は今年の春から同校の制服採寸にBodygramの技術を導入。学校制服は個人に合わせたサイズ計測が必要で、人手による採寸は欠かせないものだった。全国各地から進学する学生が多い同校では遠方から採寸に来なければいけないことや、1学年の生徒数が1000名を超えるゆえ採寸するテーラーの人員問題がコロナ禍で浮き彫りになり決めた。来年入学者で従来比70~80%程度のコスト削減が見込まれている。
また、高齢化社会の問題への取り組みでも期待は高まる。ユニチャームでは大人用おむつの最適なサイズを選べるように、LINEチャットトーク診断機能「大人用おむつカウンセリング」にBodygramを導入。大人用おむつは介護者が購入することが多くコミュニケーションのずれから、サイズ選びにミスマッチが起こりやすい。適正なサイズでなければ、不快感や漏れによるQOLの低下につながる 。その解決の一助として活用し、オンラインはもとより店頭でも最適な製品購入につなげるという。
12月上旬、Bodygramはユニ・チャームとの協業を発表した。「大人用おむつカウンセリング」にAI身体計測テクノロジーが使われる。ユニ・チャームの調べでは大人用おむつの問い合わせが4年で4倍に増え、そのうち約6割が「適切な商品」「適切なサイズ」に関することだという。
他にも体組成測定を筋力量の判断材料とできれば、高齢者の転倒防止予測につなげるなど汎用性も見込める。
現時点では測定のための撮影には立位できることが条件になっているが、将来的には寝たきりの人にも活用できるよう技術開発を進め、社会課題解決のツールとしたい考えだ。
社会課題ばかりではない。ボディサイズからリアルに再現されたアバターをTikTokで公開するなど、開発した当人たちも想像だにしなかったユニークな動きもSNS上であり、メタバースでのエンターテインメントの可能性も感じさせる。
世界一の身体採寸プラットフォームに
身体のサイズを細部まで知るのは、専門家による採寸や3Dスキャナーなど時間や場所、技術など限られた条件でしか叶わなかったが、スマートフォンのカメラで誰もがひとりで採寸が完結できる。「全ての人が簡単に使えるようにすること。本当の意味でのダイバーシティに貢献することが使命。そのために世界一のボディデータを所有するプラットフォームになる」とレイ・アイバは語る。
COOのレイ自身も、採寸にとどまらないテクノロジーの可能性を強く感じている。また新しいコラボレーションが期待されるところだ。
持続可能な未来社会へのキーワードは「共有」と「カスタマイズ」。情報を共有し、インフラが整備され、そこに個々人のニーズにきめ細かく対応したパーソナルサービスが乗ることで民主的な世界が実現する。
一律ではないボディデータの共有で無用な過剰生産を止め、個々人が必要とするモノ、コトにアクセスする最適な道筋を示す。その先にあるのは我々にとって“等身大”の世界だ。