企業創業者の多くは、CEO職を辞した後も会長や取締役として何年も残留するが、ドーシーは取締役を来年の「5月ごろ」に退任するとしている。その理由として、最高技術責任者(CTO)から新CEOに就任したパラグ・アグラワルに対して会社を率いるのに必要な「スペース」を与えることが重要だと説明した。
創業者がCEOを辞した直後に取締役からも退くことは珍しいが、コーポレートガバナンス(企業統治)の専門家は、まさにこれが正しい身の引き方だと指摘している。
米デラウェア大学のチャールズ・エルソン教授(企業統治学)は「ドーシーは全く正しい」と断言。「取締役に残る限り、そしてそれが(取締役会の)リーダー的役割である場合には特に、その人は事実上のCEOとなる。そうなれば、下の者にとっての余地は非常に小さくなる。これは常に間違いだ」と指摘した。
仮想通貨ビットコインを熱心に支持するドーシーは、自身のフィンテック企業スクエアに専念しようとしているのかもしれない。また、ディック・コストロがCEOだったときに自分が会長を務めた経験から、CEOが創業者の影響下にあるとどうなるかを理解した上で、この結論を出したのかもしれない。
投資家からの要望に応えたものだったとの見方もある。物言う投資家のエリオット・マネジメントは昨年、ドーシーが上場企業2社を同時に率いていることを懸念し、ツイッターに変革を迫っていた。
企業統治の専門家は、取締役を退く理由が何であるにせよ、それは正しい決断だと指摘している。ルルレモンのチップ・ウィルソンやファッション界の巨人ラルフ・ローレンら、CEO退任後に取締役会に残った創業者の多くは後継者と意見を衝突させた。
イェシーバー大学経営大学院の学長で、書籍『The Founder’s Dilemmas(創業者のジレンマ)』を執筆したノアム・ワッサーマンは「創業者は自分の元々のビジョンに非常に思い入れがある。成功を収めた黎明期では特にそうだ。それにより頑固な考え方を持ってしまう」と語り、特に創業間もない企業で取締役会にとどまる創業者は約70%だと説明した。