この買収に関するベストバイのプレスリリースでは、相手企業のカレント・ヘルス(Current Health)を次のように説明している。「在宅看護技術の大手プラットフォームであり、リモートでの患者モニタリング、遠隔医療、患者エンゲージメントを、医療機関向けの単一ソリューションに統合している」
ベストバイ・ヘルス部門のプレジデントを務めるデボラ・ディ・サンツォ(Deborah Di Sanzo)は、買収の動機をさらに詳しく説明している。「コンシューマーテクノロジーの未来は、ヘルスケアの未来に直結している……(当社は、)消費者が自宅で直接テクノロジーを利用するのを支援するための独自の専門知識を持っている。カレント・ヘルスのリモートケア管理プラットフォームと、当社の既存のヘルス製品やサービスを組み合わせることで、あらゆるヘルスケアのニーズに対応する総合的なケアのエコシステムを創出できる」
11月には、この買収が最終的に4億ドルでまとまったと報じられた。
リモートモニタリングと患者エンゲージメントの分野において、カレント・ヘルスは急速に引く手あまたな存在になっていた。2021年に入ってからの資金調達では、4300万ドル近くを獲得した。特筆すべきは、同社の顧客リストに有名な医療機関が勢ぞろいしていることだ。マウント・サイナイ・ヘルス・システム(Mount Sinai Health System)、ガイシンジャー・ヘルス(Geisinger Health)、メイヨー・クリニック、パークランド・ヘルス&ホスピタル・システム(Parkland Health & Hospital System)、英国の国民保健サービス(NHS)、アストラゼネカなどが名を連ねている。
この事実は、業界のリーダーたちが同社の技術を信頼していることを示している。カレント・ヘルスの技術は、リモート患者モニタリングから、データ分析、遠隔医療ソリューションまで多岐にわたっている。
今回の買収は、ベストバイにとっては比較的新しい戦略だ。同社は長年にわたり、一般消費者向けの小売家電だけに力を注いできた。とはいえ、テクノロジーを家庭に統合して生活の質を高める家庭内ソリューションの提供に関しては、以前からずっと強力な企業のひとつだった。したがって、リモートでの医療モニタリングと在宅医療を内包するカレント・ヘルスのようなソリューションの買収は理にかなっている。
さらに、ベストバイ・ヘルスの全体戦略は、最先端テクノロジーを活用して、キュレーションされた医療を提供することにある。「ベストバイ・ヘルスは、小売インフラと人間が主導するサービス機能を原動力として、生活を豊かにし、ビジネスの潜在能力を引き出す比類のない能力を提供している。信頼できるパートナーとして、今後も引き続き、お客様の長期的な成功に向けたイノベーションに取り組んでいくつもりだ」
たしかに、医療テクノロジーとデジタル医療業界は急速に拡大している。また、既存のネットワークを活用して、エコシステム全体に価値を追加できる、定評と信頼性のある企業も切望されている。ベストバイの確立されたインフラ、カスタマーサクセスに関する長期的な蓄積、壮大なビジョンからすれば、ヘルスケアにおける同社の将来は確かに有望だ。