植野:そこからレノボに入った理由は?
リュウ:スタートアップを経験し、Cクラスの仕事の重要性を認識しました。でも、自分にそれまで十分な経験があったかと思うと、まだ足りないと痛感したんです。それで、大きな組織で働きたいと考えました。
レノボは会社が大きい割にマネジメントチームがカジュアルでフラットだし、リスペクトできました。コロナのタイミングで、ある意味ではPCが世の中を支えていたから、その世界でできることはスケールも大きくて面白そうだと感じたんです。
植野:それまでCMOをやられた2社と違いますか。
リュウ:売り上げも人数も10倍以上です。そういった企業のスケールに加え、外資と日本企業のカルチャーミックスがある組織です。いま国内に2000人くらいいる社員の半分弱が、10年前に一緒になったNECの人です。これまでそういう方々と仕事をしてこなかったので学びがあります。
植野:彼らからどのように学んだのでしょう。
リュウ:『The First 90 Days』(マイケル・ワトキンス著、邦題『ハーバード流マネジメント講座 90日で成果を出すリーダー』)という有名な本がありますが、社長から「あの本は真似しないでね」と。「それよりみんなが何をやっているのか観察して、気持ちを理解してほしい。組織も大きいし、いろんな人がいるから、ちゃんと見て理解したうえで動きましょうか」と助言されたのはありがたかったです。
これまで経験してきた会社は、人数も部署も少ないので1週間もあれば組織の姿が見えました。でも、レノボを理解するのは時間がかかりました。まずは3カ月でじっと社内の人の話を聞くことから始めました。自分のチームやほかの部署、いろんな人たちと話すほど可能性が見えてきました。
植野:具体的にそこから出した一手は?
リュウ:例えば、マーケターがマーケティング以外のオペレーション業務に時間を使わざるをえないプロセスがあると知りました。それを変えていかないと、本来のマーケティングに時間を使えません。
植野:僕はいまそれができなくて、僕もメンバーも何かいつも忙しくしているぞ、と悩んでいて。どう改善したんでしょう。
リュウ: 例えば、明らかに時間を使いすぎなオペレーションをチーム内で洗い出し、アウトソースしてそれだけをやる人のポジションを1個つくりました。そんな具合に人数が足りなければ、上司に人を増やすべき理由をロジカルに説明する姿勢が大切ですね。
植野:最後にCxOを目指す読者へのアドバイスを伺います。シーチャウさんが大事にしているものは?
リュウ:私のなかでは、人がいちばん大事。みんなやりたいことを楽しくやっていたら、結果が出ないことはないんですよ。甘やかすという意味じゃないですよ。ひとりの個人として、人として見る。自分のことしか考えないCxOは絶対にうまくいかない。
私は本からではなく、人と触れることから始めます。レノボに入ったばかりのとき、私はPCが全然わからなかったんです。月1で営業さんに同行して店頭でポップをつくりながら、教えてもらいました。
植野:CMOが自らですか?
リュウ:営業の方のアシスタント的なポジションで行くんです。その立場でバイヤーさんなどと話すと、PCのベーシックな知識からいろいろ教えてくれます。そういう勉強のチャンスがいろんな場所に転がっているので、自分でそれを拾いにいく感じです。