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2021.12.20 16:00

リヒテンシュタイン公爵家の資産を900年守り続ける 超長期に運用するサステナブルな投資の価値

左:LGTウェルスマネジメント信託代表取締役会長兼プライベートバンキングジャパンCEO 永倉義孝 右:LGTプライベートバンキング・アジアパシフィ ック会長兼最高経営責任者 ヘンリ・レイマー

左:LGTウェルスマネジメント信託代表取締役会長兼プライベートバンキングジャパンCEO 永倉義孝 右:LGTプライベートバンキング・アジアパシフィ ック会長兼最高経営責任者 ヘンリ・レイマー

900年続くリヒテンシュタイン公爵家の資産管理ノウハウを活用したプライベートバンク・LGTが、日本法人となるLGTウェルスマネジメント信託を開業した。長期的かつ持続可能性の高い資産運用・管理を実現するために、同グループが貫いてきた理念と投資戦略とは。


2020年には日本人の40人に1人が富裕層に分類され、米国に次ぐ富裕層市場を形成しているが、そこには大きな問題が横たわっている。

「日本は世界第3位の経済大国であり、アジア太平洋地域だけでなく、世界的に見ても非常に重要な存在です。しかし、日本の家計は約18兆ドルの資産を保有しているものの、その半分は利回りの低い現金・預金で保有されています」

そう指摘するのは、LGTプライベートバンキング・アジアパシフィック会長兼最高経営責任者のヘンリ・レイマーだ。

日本が「ゼロ金利政策」を導入したのが1999年のこと。途中、幾度かゼロ金利政策は解除されたものの、景気の低迷で再びゼロ金利政策に戻り、現在はマイナス金利政策が続行中だ。預貯金利率は預入金額、預入期間に関係なく一律で年0.002%程度で、仮に1億円を1年間運用しても、得られる利息は2,000円でしかない。もはや、運用と言うには程遠いのが現実だ。

しかし一方で、世界的にはインフレ懸念が強まりつつある。インフレ下において預貯金金利が上がらなければ、日本人が保有している個人金融資産の約半分が、価値を目減りさせてしまう。それは日本の個人資産運用、とりわけ多くの資産を保有する富裕層の資産運用・管理において、資産価値の持続性が維持できなくなるという、由々しき問題につながる。活路はないのか。

「実は、日本の富裕層の間でも長期的かつ持続可能な投資戦略への関心が高まってきています。それと同時に、日本の伝統的なウェルスマネジメントの在り方も変わってきました。つまりブローカー主導ではなく、より総合的な方法で資産管理を行おうとしているのです」(レイマー)

例えば日本の証券会社は、自らの収益性を最大化するため、富裕層に売買を推奨する。より大きな資金で株式や債券の売買を繰り返してもらえれば、それだけ証券会社が得る手数料収入が増えるからだ。

しかし、このようなブローカー主導では、本当の意味でのウェルスマネジメントは実現できない。長期的な資産運用・管理の要諦は、特定の株式や債券の売買を繰り 返してキャピタルゲインを狙うことではなく、幅広い資産クラスに分散し、時の流れと時代の変化に耐えて資産の価値を毀損させないポートフォリオの構築にある。それを具現化したのが「Princely Portfolio」なのだ。

「持続可能な資産運用」の価値観


LGTがリヒテンシュタイン公爵家、ならびにプライベートバンク事業を通じて世界中の富裕層がもつファミリーアセットを運用・管理するための「Princely Portfolio」は超長期的な運用方針のもと、世界中の幅広い資産クラスに分散投資することで知られている。

この「Princely Portfolio」は、リヒテンシュタイン公爵家の価値観である、「持続可能な思考と行動」を礎としている。昨今、日本においても投資にESGの視点を組み入れる動きが広まっているが、リヒテンシュタイン公爵家にとって、それは先祖代々から続く家訓のようなもの、と言っても過言ではない。時代の流れを問わず、 常に持続可能な思考と行動を旨としてきたからこそ、リヒテンシュタイン公爵家の900年にも及ぶ歴史があるのだ。

持続可能な思考と行動は、「Princely Portfolio」の構築に発揮されている。LGTウェルスマネジメント信託代表取締役会長兼プライベートバンキングジャパンCEO永倉義孝は次のように話す。

 
LGTは、1921年に10名の従業員で設立されたバンク・イン・リヒテンシュタイン(BiL)を始祖として業務を開始。
写真:Bank in Liechtenstein(BiL),1971年頃


「何百年という、超長期的な時間の経過のなかで資産価値を毀損させないためには、人類の存続を危うくする製品・サービスを提供する企業を、投資対象から排除しなければなりません。短期的に大きな収益を上げたとしても、超長期的に見れば、人々はこの手の企業の存続を許さないからです」

つまり、ファミリーアセットを永続させるために構築されるポートフォリオには、ESGの概念が必要不可欠になる。

「昨今、サステナブルな投資が主流になるなかで環境、社会、ガバナンスに関する事項が財務的に重要であるという投資家のコンセンサスが得られています。健全な地球を次世代に残すのは私たちの責務であり、だからこそ私たちは持続可能な投資、インパクト・インベストメントを通じて、お客様やステークホルダーのために長期の運用が可能なソリューションや投資を見つけ、さまざまな課題解決に貢献したいと考えています」(レイマー)

LGTを100年持続させた企業文化


「持続可能な思考と行動」という価値観は、LGTの企業文化、哲学にも深く根付いている。

レイマーは、「LGTは全社的に、持続可能性に対する取り組みを実践しています。つまり社内でも、事業活動においても持続可能な行動をとっているのです」と言うが、なぜだろうか。

「事業を永続させるためには、その企業が大勢の人々から愛されなければ実現できません。かつての武器商人ではありませんが、人の生命を脅かすような事業は、遅 かれ早かれ人類社会から排除されていきます。環境に配慮し、ジェンダーやLGBTに対する偏見を排除し、多様性を容認できる文化をもつ企業こそが、事業を永続さ せることができるのです」(永倉)

LGTは、それを企業の在り方として掲げるだけでなく、「Princely Portfolio」を通じてリヒテンシュタイン公爵家、ならびに顧客の資産運用・管理にも貫いてき た。昨今、話題になっているESG投資とは歴史も、徹底さの度合いもまったく別ものなのだ。

「特にこの10年、持続可能性の基準に従って投資を分析し、調整するための専門知識とツールを開発してきました。私たちは2017年に導入した『LGTサステナビリティ格付』によって個々の株式、債券、ファンド、ETFのサステナビリティ品質をお客様に提示し、サステナブルな投資に必要な透明性を担保しています。この格付は、2009年からLGTのサステナビリティ・ファンドの運用で成功している『ESG Cockpit』と呼ばれる社内の格付けツールを用いて行われます」(レイマー)

「Princely Portfolio」は資産を永続させるためだけにあるのではない。その投資活動を通じて、よりよい地球を次世代につないでいくという尊いミッションを実践しているのだ。

LGT Private Banking Asia
https://www.lgt.com/asia/jp/


LGTが貫くサバイバルでありサステナブルな理念


小国ながらも、国民一人あたりのGDPが世界トップクラスで、公的債務がゼロという豊かさを持っているリヒテンシュタイン公国。900年にわたってその豊かさを保持し続けられているのは、サバイバルするための知恵と、サステナビリティを重視する姿勢を常に意識しているからこそ。「リスクマネジメントを重視し、私たちのポートフォリオには、世界中の株式や債券、不動産、プライベート・エクイティ、プライベート・デットに至るまで、ありとあらゆる資産が組み入れられています」(永倉)

 
リヒテンシュタイン公国のLGT名誉会長フィリップ・フォン・ウント・ツー・リヒテンシュタイン公子(左)と、LGT会長マックス・フォン・ウント・ツー・リヒテンシュタイン公子(右)。


永倉義孝◎LGTウェルスマネジメント信託代表取締役会長兼プライベートバンキングジャパンCEO。LGTの日本でのウェルスマネジメント事業を統括。金融業界における経験は25年以上。

ヘンリ・レイマー◎LGTプライベートバンキング・アジアパシフィック会長兼最高経営責任者。20年以上にわたり、LGTの新規事業分野の開発とアジア地域におけるLGTの実績を拡大してきた。

連載「Commitment, Expertise and Sustainability~900年以上の歴史を持つプライベートバンク、 LGTが日本にもたらす変化とは?」はこちら>> 
#1公開中|日本の富裕層の資産管理が変わる ──リヒテンシュタイン公爵家の「プライベートバンク」LGTが今、日本に進出するわけ
#2公開中|900年続くリヒテンシュタイン公爵家由来の運用哲学 ── Princely Portfolio
#3本記事|リヒテンシュタイン公爵家の資産を900年守り続ける 超長期に運用するサステナブルな投資の価値



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