世界的VCであるアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が主導する「Meta4 NFT Fund I, LP」や、ブロックチェーンエコシステムを開発するEnjin社の「Efinity Metaverse Fund」など、1億ドルを超える規模のメタバースファンドも設立されている。
さらに、デジタルアバターを用いたメタバースコミュニケーションサービス「ZEPETO」がNFTアイテムを販売したり、「Pokemon GO」を開発したナイアンティック(Niantic)とビットコイン関連のデビットカードを提供するフォールド(Fold)が提携し、ゲームプレイに応じたビットコインリワードを受け取れるサービスを開始したりと、ブロックチェーンとメタバースを組み合わせた事例も発表されている。
いま、「メタバース」がこれほど盛り上がっている背景には、かねてからのVR領域の興隆に加えて、ブロックチェーンおよびNFTの広がりも大きく影響しているだろう。現在は、さまざまなステークホルダーの目指すものが、たまたま「メタバース」というキーワードで合流した結果、多くの文脈がからまりあっている状況だ。
今回の記事では、その現状を整理してみたい。
デジタルだがバーチャルではない「新しいメタバース」たち
メタバース(metaverse)とは、コンピューターやネットワークのなかに構築された現実世界とは異なる仮想空間やそのサービスのこと。英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語だ。
多くの人が共通して思い浮かべるのは、リンデン・ラボが2003年にリリースした仮想空間サービス「Second Life」だろう。Second Lifeでは、ユーザーは3Dモデルで自身のアバターを駆使し、仮想空間内を自由に歩き回り、他のユーザーとコミュニケーションを楽しむことができる。
こうした従来の流れを汲むメタバースと、冒頭で紹介したようなメタバースの新潮流との間には本質的な違いがある。それは「デジタル」ではあるが「バーチャル」ではない、という点だ。
メタバースの新潮流には、現実世界における所得と遜色のない金銭的価値を持つNFTや暗号資産を得られるものが存在する。例えば、NFT化されたメタバース内の土地が、数億円で売買されたりするといったようなことだ。
Second Lifeにはゲーム内通貨と法定通貨の換金機能があり、現在は金融ライセンスを保有するTiliaという子会社によってシステムが提供されている。しかしながら、一般的なメタバースがゲーム内活動を現実世界の収益に繋げる仕組みを作るハードルは高い傾向にある。これに対し、NFTや暗号資産は、法定通貨とスムーズに交換して収入を得ることも可能だ。複数のサービスを横断して利用することもできるし、サービスが終了してもブロックチェーン上に存在し続ける。
またフェイスブックのような実名を前提としたSNSと連動したメタバースのなかで生じるコミュニケーションは、現実の利用者と1対1で紐付くことになる。そうなれば、メタバース内の出会いが、商談などのビジネスチャンスや、恋愛や結婚などのライフイベントにも直結しうるだろう。